「水害の履歴を開発計画に生かせ」 雑学大で高橋氏講義

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 NPO法人東京雑学大学の新春特別講義は110日、高橋裕(ゆたか)東京大学名誉教授を招き、「治水対策と流域管理」と題してコール田無(西東京市)で行われた。一般参加や丸山浩一市長を含め約70人が聴講した。
 
 高橋氏は、流域全体で洪水被害を抑えるという新たな流域管理の考え方と水災害軽減の業績により昨年、科学技術の進歩に貢献した人に与えられる日本国際賞(国際科学技術財団主催)を受賞した。国連の依頼を受けて水害調査をしたバングラデシュで、洪水や高潮の際に住民が避難するシェルターの大量建設と予報組織づくりを提言、取り入れられたことで数十万人の死者が約4千人に減ったという。
 
 日本の水害については、戦後の大きな台風や豪雨被害の歴史をたどりながら、「戦後、全国の主要河川はすべて堤防決壊を経験している。戦後15年間は毎年1千人以上が亡くなっており、元来、水害大国だ」と指摘。
 
 昨年9月、茨城県常総市で鬼怒川の堤防が決壊したことに対し、被災者たちが一様に「まさか」と思っていたことを例に挙げ、河川行政当局は地域の過去の水害に関する情報提供が不十分だと批判した。
 
 高橋氏は、地域の土地利用の変化が水害をもたらし、被害を大きくしていると分析し、被災した土地の履歴を開発計画に生かすべきだと主張。具体的な治水対策では、堤防を高くする手法では限界があり、遊水地を含む多面的な方策が必要と述べた