袋田の滝と岡倉天心とアンコウ鍋 茨城北部の旅(2の2)

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ホテルの夜が明け、きのうは見えなかった太平洋が窓の外に広がっていた。灰色の重たげな雲が空を覆っていて、午前647分の日の出が見られないどころか、太陽の方角さえ見当がつかなかった。

昨夜来、波音が大きく聞こえたのは、うねりが大きいうえ、岩場の多い入り江になっているためとわかった。海原は、朝湯を浴びた露天風呂からも眺められた。

8時の朝食に全員がそろい、この日の目玉・六角堂=写真=への出発を9時15分と決めた。六角堂は日本近代美術の祖・岡倉天心が読書と思索にふけった場所で、アジアの多様な文化を一つの建物で表現したとされる。東日本大震災津波で流失し、1年後に再建された。

ホテルを出るころからどんどん青空が広がった。水戸光圀のつえで水が湧き出したと伝わる「黄門の井戸」、東京・染井霊園から分骨した天心の墓地を経て、10分もかからないで六角堂のある「天心遺跡」に着く。遺跡は茨城大学五浦美術文化研究所が管理し、長屋門が出入り口になっている、70歳以上は入場無料。

天心像や天心設計の釣り舟などを置く記念館を見て、海に突き出した岩の上に建つ六角堂へ。見回すと崖下や岩場を波が荒々しく洗い、遠くまで三角波が立っていた。

和風の旧天心邸をのぞき、「亜細亜ハ一な里(アジアは一つなり)石碑と順路通り歩いた。青空に向かって立つ松林の姿が美しい。

茨城県天心記念五浦美術館までは遺跡から歩いて15分ほど。ここも70歳以上は入館無料。途中、六角堂風の公衆トイレがあった。

岡倉天心記念室には、天心が五浦に居住していた明治40年ごろの書斎が復元されているほか、愛用の茶道具、東京美術学校(現・東京芸術大学)の校長時代に学生だった横山大観菱田春草が授業で描いた野菜の課題画などが見られる。

企画展は「招福 吉祥のかたち」(1月15日まで)をテーマに、富士山や松竹梅、クジャク、ボタンなどをモチーフに描いた明治以降の日本画と染織、磁器が展示され、一足早い正月気分に誘われた。

ホテル直営のレストランで生ビールと海鮮丼を取り、事実上の旅の終わりとなった。(下の写真は左から旧天心邸、六角堂風の公衆トイレ)
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