求められる医療と宗教の融合 「僧侶の医師」が講演

イメージ 1
 武蔵野大学仏教文化研究所の今年度の公開講座の最後となる特別講座は3月4日、医師で僧侶でもある医療法人徳養会・沼口医院理事長の沼田諭さん=岐阜県大垣市在住、写真=を招き、同大武蔵野キャンパス(西東京市)で開かれた。

 講座のタイトルは「仏教スピリチュアルケア施設の設立と地域包括ケアシステム~仏教者としての願い~」で、約70人が聴講した。

 沼口さんは2年前、大垣市で臨床宗教師が常駐する在宅型ホスピスを医院に併設し、終末期の人の心のケアに当たっている。

 臨床宗教師とは、公的機関と連携しながら、患者の苦悩に耳を傾けて孤独にさせず、その人らしく日常を生きられるよう援助していく「スピリチュアルケア」を行い、「死後の世界」への架け橋ともなる。宗教者ではあるが、布教伝道を目的としない。近年、武蔵野大をはじめ養成課程をつくる大学が増えている。

 沼口さんは「『命を支える』医師と『いのちと向き合う』僧侶が今の社会の中でコーディネートできないか」と自らの活動の原点を語った。

死をめぐっては、実際には国民の8割が病院で死ぬ時代なのに、自宅で最期を迎えたい人が約6割に上る。また高齢化社会では病気ではなく障害(慢性疾患)が増え、在宅や施設でのケアが必要になっていると指摘。

一方で、病院での死は日常生活の中から死を見えなくし、死と向き合えない人が多くなった。がんを宣告された人は、死ぬときは苦しいのか、死後の世界は存在するのかという不安に襲われ、難病や慢性疾患などの人は歩行や食事、トイレ、入浴、着替えといった日常の動作低下に苦悩する。

こうした苦痛と向き合うには、病院でも在宅でも施設でも「医療者と宗教者が一緒に仕事することが必要だ」と述べ、診療から寄り添いまで多職種による地域包括ケアの実現を訴えた。