「岩淵の一本桜」は飯能市の観光名所とはなっていないが、西武池袋線飯能駅の観光案内所「ぷらっと飯能」には、ヤフー地図に順路を手書きで加えた案内図が用意されていた。「今年はお尋ねが多いものですから」と職員さん。
東京で4日連続した、最高気温が25度を超える夏日にはならないという予報の通り、ハイキングに絶好の日和。
午前10時半、飯能駅南口を出発し、広い美杉台通りを南へ。入間川に架かる橋も回り道し、飯能大橋の少し上流に架かる矢久橋を渡った。渡り切った所に、橋が伊勢湾台風災害から復旧されたものであることを表す記念碑が建つ。
一輪草と二輪草が群生する土手の横から林道が始まり、切り通しのようにえぐられた小道を進むと、崖上に旧道とみられる平らに踏み固められた尾根道を発見。一行に軽い興奮が満ちた。
山道が旧上州道に突き当たった。上州道は川越方面から青梅や多摩川の奥地へ通じる昔の大事な道筋。右に曲がり、林地の下草刈りや道の整備など管理が行き届いた旧道を西へ進む。谷側はコナラなどの広葉樹が一斉に芽吹き、パステル調の淡い緑色に染めていて美しい。
一本桜に到達するための下り口はわかりにくい。午後1時、地図で2度目の道探しをしたついでに弁当タイムとなった。
近くで見上げても、小高い丘の上から眺めても、風格を感じる。所有者と思われる農家の人に聞くと、天然のヤマザクラで樹齢は80年から100年という。例年より開花は遅く、「咲いたと思ったら3日で散った」と数日前の強い風雨を恨んだ。
私たちのリーダーは全員から飲み物の注文を聞き、携帯電話をかけると、酒屋が車で妙円寺の門前まで配達してくれた。この地でなぜ、そんなサービスをしてもらえるのか、疑問を口にすると、お茶を濁された。ともあれ、丘の上に戻ってそれぞれにプルタブを開け、花見気分に浸ったのだった。(下の写真は左から歓喜寺の大カヤ、旧上州道に至る二つの山道)