
奈良仏像展の旅2日目の5月17日は興福寺へ=写真は仮講堂。歩いて5分とかからない所にホテルをとったので、前夜の下見は楽だった。7時すぎの境内は若いカップルが1組と夜景狙いの観光客くらいのもので、私もライトアップされた国宝・五重塔にカメラを向けた。
ホテルに戻る途中、小さなうどん屋に入り、純米の地酒を飲みながら、ちくわの天ぷら付きうどんをすすった。だしの効いた、久しぶりの関西うどんを完食。アツアツのちくわは濃厚な味で、店主が「濃いでしょ」と同意を求めてきた。
それは、1カ月後に北海道釧路湿原を走る「ノロッコ号」の指定席券を、JR奈良駅のみどりの窓口で手に入れることだ。午前10時の発売開始よりも早く窓口に並ばなければならない。幸い、客は少なく、5分前まであとの客に順番を譲る形で待機。頃合いを見計らい、女性職員がコンピューター端末と「格闘」と言えるほど素早く手を動かし続け、首尾よく、それも窓側を確保できた。職員に何度もお礼の言葉を述べた。
ここからは前日と同じバス乗り場に行き、前日より手前の「県庁前」で降りた。興福寺境内の参道はすでに観光客らとシカであふれ、シカが道の真ん中を占め、人はその脇を歩く光景も見られた。
阿修羅などの群像展は仮講堂で開かれており、入館券はすぐ買えた。東金堂では「国宝仏頭特別安置」があるので共通券とした。
東京国立博物館で2009年開催の「国宝 阿修羅展」を見た時は、押すな押すなの混雑で立ち止まらないよう促された。今回は像が並ぶ舞台の前を行ったり来たりし、配置図と見比べてじっくりと拝観できた。
展示は、鎌倉時代の作で国重要文化財の阿弥陀如来坐像(ざぞう)を本尊とし、最も外側を重文の四天王像が囲む。本尊の前は、阿修羅をはじめとする八部衆像や釈迦の十大弟子像(6体が現存)、天燈鬼(てんとうき)・龍燈鬼(りゅうとうき)像などが守る構成で、いずれも奈良時代や鎌倉時代作の国宝だ。
ふだんこれらを安置する国宝館が耐震補強工事で年内休館となるため、仮講堂に移し、かつてあった西金堂の雰囲気を再現したという。ここでの阿修羅は一人のヒーローではなく、チームプレーに徹する仲間に溶け込んでいるように見えた。
肝心の仏頭(銅造、国宝)は堂の右端の台座に鎮座していた。高さは約1メートル。白鳳期を代表する仏像で、これも教科書でおなじみ。近年は国宝館で展示されており、日光・月光菩薩との再会は600年ぶりという。
南円堂や三重塔を見て、奈良公園を散策。食事を取り、午後1時すぎの奈良発みやこ路快速で帰途に就いた。9月には東京・上野の東京国立博物館で「運慶展」が始まる。快慶は運慶の父・康慶の弟子。この縁と「史上最大の運慶展」の前宣伝に乗り、秋の展覧会を待ちたい。(下の写真は左から興福寺参道の人とシカ、東金堂と五重塔)

