ジオパークの仲間入りを目指す秋川流域ジオパーク推進会議(あきる野市、日の出町、檜原村)とともにガイド活動と取り組む「あきりゅうジオの会」の視察研修会に同行させてもらった。会員外を含め32人が参加した。
このような岩石は8万5千~6万5千年前に作られ、三波川(さんばがわ)変成帯と呼ばれる地層は四国から九州まで続く。
上流へ向かい、皆野中の横の坂を下ると「栗谷瀬橋(くりやぜばし)の蛇紋岩」が見られる。緑色の蛇紋岩は川沿いに露出しており、割れた面にアスベスト(石綿)の原料となるクリソタイルという繊維状の鉱物が広がっていた。少量をつまみ上げ、吸い込まないように注意しながら指先でもみつぶしてみた。
蛇紋岩は国会議事堂の玄関の床に使われており、クリソタイルは江戸時代に平賀源内が火消し装束を織るのに使ったという。近年はブドウの甘さと蛇紋岩との関係が注目されているそうだ。
水潜寺は温泉施設からバスで5分ほど。日本百観音霊場や秩父34霊場の札所巡りの最後の寺(結願所)だが、今回の目当ては地質や地形だ。本堂の横の崖や沢は石灰岩と緻密で硬い堆積岩のチャートとが混ぜこぜになって存在する。
胎内くぐりをして俗世に戻るという石灰岩の洞窟は、現在は落石のおそれがあるため立ち入り禁止になっている。洞窟から流れ出る「長命水」はカルシウムとマグネシウムを多く含み、フランスの有名なミネラルウオーターよりも硬度が高い。備えられたひしゃくで飲んでみた。冷たさが先立ったのか、これが硬水なのか、味が感じられなかった。
秩父華厳の滝は水潜寺の近くにあり、落差は12メートル。赤い岩肌(チャート)を水が流れ落ちている。壁の縞模様は大昔、海底で堆積したことを示している。滝の上流に2億年~1.5億年前のジュラ紀の地層があり、秩父帯と呼ばれる。
滝に向かう途中の陸上に巨大な岩石が一つ鎮座し、青年グループが集まっていた。バスの掲示から筑波大学の学生とわかった。私たちも滝の帰りに岩を見た。上下で成分が違うように見え、一部に三角の模様のようなものが現れている。ガイド氏によると、岩は秩父帯のチャートで、プレートの移動の過程で変形したらしい。
秩父盆地が山に囲まれたのは、1500万年前に長瀞辺りの地層が隆起したためだったり、1970年代を境に農林業や繊維など産業のまちから観光のまちに変わってきていること、なのに道路整備が追い付かなかったりと、悠久の昔が今につながっていることを改めて学ぶツアーにもなった。(下の写真は左から、皆野中付近の荒川沿いで蛇紋岩を観察、赤色チャートの壁を流れ落ちる秩父華厳の滝)