観測支えた施設と機器 三鷹・国立天文台ガイドツアー

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 国立天文台321日、三鷹市三鷹キャンパスで「春分の日ガイドツアー」を行った。普段は公開していない施設跡も見ることができ、雪や雨の中を訪れた人たちを喜ばせた=写真は20世紀初頭に購入したフランス製の観測機器。

 1日に3回、各回の定員20人で参加者を募集したが、あいにくの天候で数人の辞退があったという。

 ガイドは研究員OBの中桐正夫さん。現役時代はハワイのすばる望遠鏡の建設プロジェクトに携わり、2011年に始まったガイドツアーの提案者でもある。

 中桐さんは国立天文台について、「日本の時刻を決定する、政府になくてはならない組織」と話す一方で、三鷹キャンパスはほとんど観測しておらず、「博物館のような状態」とも。

 この日は、中桐さんの解説をイヤホンで聞きながら、「北コース」を1時間30分ほどかけて歩いた。

 正面入り口の坂を上ってすぐの所にある日時計を皮切りに、日本の中央標準時を決めるための子午儀の一つが載っていた台座の記念碑▽19世紀末のドイツ製で国の重要文化財でもある子午儀などを収めた子午儀資料館▽荷造りされたままだったため関東大震災の難を逃れ、今でも動く子午環とかまぼこ型の施設(国登録有形文化財)▽旧ソ連製の人工衛星追跡用望遠鏡など大小さまざまな歴史的観測機器を展示する天文機器資料館――と、ここまでは普段も公開されている施設だ。

 この先は雪をかぶりぬかるんだ小道。「見学者は立ち入りご遠慮を」の表示と鎖を渡したポールの横を抜け、森の中へ。

 フランスからの国際報時信号を大正末期から終戦直前まで受信していた高さ60メートルの鉄塔は4基あり、やぶの下から発掘されたコンクリートの基礎が見られる。

 60メートル鉄塔と同時期に三鷹国際報時所の庁舎は戦後、役割を変えながら1970年代に取り壊され、今は門柱だけが残る。門柱の銘は物理学者で随筆家の寺田寅彦の筆という。

 平地にあるのは極めて珍しいという一等三角点があった。麻布にある経緯度原点の予備点として、震災復旧測量の中で参謀本部陸地測量部(国土地理院の前身)が設置した。「三鷹村」の名が付く。

 菱形の測量によって地殻変動をとらえるため端点に埋め込まれた基準標識を最後にツアーを終えたが、中桐さんのわかりやすく丁寧な解説に質問はほとんど出なかった。廃棄されかけた機器の保存に力を尽くしてきたことも随所で伝わってきた。(下の写真は左から三鷹国際報時所跡の門柱、一等三角点「三鷹村」)
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