おっさん5人組 五能線の旅(7完の5・十二湖)

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■青池・ブナ林 駆け足観光





奥羽線大館行きの普通列車に乗る。五能線の起点・東能代駅=写真=まで約1時間。五能線はもっとすいていてほぼ貸し切り状態。海側にゆったりと席を確保できた。

刈り取りが近い黄金色の田が広がる八郎潟を過ぎる。日本海はべたなぎ。海と空の風景はまぶしく、遠い水平線の上には夏の雲が浮かんでいる。私たちの座席は絶えずおしゃべりで華やいでいた。


正午を少し過ぎ、十二湖駅に到着。下車した途端、車両1両が満席になるのではないかというほどの人数の団体が乗り込んできた。十二湖観光を終えて次の目的地に向かう人たちに違いない。この旅で「観光地」を初めて感じた。


駅舎を出ると、すぐそばの国道101号沿いに数軒の食堂風の建物が並んでいた。駅前から出る十二湖行きのバスまで1時間あり、ここで昼食をとることになっていた。ところが、目当ての食堂は休業中。6年前にバイクで白神山地などを回ったという一人が、その時の深浦特集のガイドブックに紹介されていたという。


駅舎の中に観光案内所があり、観光協会の腕章を付けた女性に聞くと、少し離れた所の1軒だけが営業しているという。足場を組んだ建物に入り口を見つけて入った。テーブル席に腰を下ろし、メニューを見ていると、注文を取りにきたおばちゃんが「おまかせ定食にしてほしいんだけど」と遠慮するふうもなく押し付けてくる。「ほかのを頼むと時間かかるよ」と今度はおやじさんが出てきた。ほかに客はいないのに。あとで聞くと夫婦二人で切り盛りしている。


あっけらかんとした接客態度もあって「よし、それでいこう」と一致。ビールを注文すると、店に入った所の自販機で買ってくれという。省力化が徹底している。


出てきた定食は、これまた「千円は安い」で一致する中身。マグロの刺し身は切り身が分厚く数も多い。遅れて大ぶりなエビフライが2匹付いた。ほかにフキ煮、イカの塩辛、モズクの酢の物など小鉢が5品で、どれも量が多い。ご飯は炊飯器からよそい放題。おやじさんは話し好きだった。


十二湖の中でもハイライトは「青池」。青池に行くための弘南バスの路線バスは1時間に1本。定刻通り来たバスは、都市部でも公共交通がない地域を走るコミュニティーバスと同じ小型。バスの左手、木立の向こうに王池などいくつかの池を見ながらバス停はほとんど通過し、約15分で終点「奥十二湖駐車場」に着く。近くの「森の物産館キョロロ」前はなかなかのにぎわいを見せていた。


案内標識に従って遊歩道を青池へ。途中、鶏頭場(けとば)の池から崩山(くずれやま)の岩肌が見える。江戸時代に起きた山崩れで谷がせき止められ、33の湖沼ができたが、崩山から見えたのが12だったところから十二湖の名が付いたという。


人気スポット青池はバス停から徒歩10分ほど。広くはない水面のかなりの部分を落ち葉が覆っており、木漏れ日が届く隙間が、かろうじて濃い青色を見せていた。階段を上り、世界遺産白神山地を象徴するブナの自然林に入る。


帰りのバスまで45分と限られた時間の中で樹林を抜けることはできなかったが、明るい木立を仰ぎ見ることはできた。引き返す途中、ブナの幹に耳を当て水の流れる音を聴こうとする観光客を見かけた。(下の写真は青池、ブナ自然林)
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