東海道五十三次の名所を江戸時代の浮世絵師、葛飾北斎(1760~1849)の作品で見る講座が10月30日、西東京市谷戸公民館であった。すみだ北斎美術館(東京都墨田区)の学芸員の五味和之さんが各宿場の特色を説明し、北斎作品を画像で紹介した=写真。
五味さんによると、北斎は40代から50歳までに五十三次の作品を7種類描いた。手の平より小さくトランプほどの大きさで、持ち運びに便利な、旅行が少ない時代のガイドブックだった。約30年後には歌川広重(1797~1858)も表彰状サイズの大判錦絵を数多く刊行するが、旅行から帰って追憶するのに見られたという。
渡し舟や渡船場、関所、城など宿場は違っても画題が共通するものもあるが、とろろ汁(鞠子<まりこ>=静岡市)、かしわ餅(白須賀=湖西市)、焼きはまぐり(桑名=桑名市)などの名物、たこ揚げ(掛川=掛川市)などの伝統行事、有松絞(鳴海=名古屋市)や大津絵(大津=大津市)など地場産業が、人々の豊かな表情と相まって旅心を誘う。