鎌倉幕府の執権・北条氏の分家として金沢北条氏をおこした実時(さねとき)が文庫を創設。最後の四代当主貞将(さだゆき)まで和漢の書籍や仏典、美術工芸品などの収集が受け継がれたこと、蔵書は金沢北条氏の滅亡後も一族の菩提(ぼだい)寺の称名寺に守られ、施設も昭和初期の再建を経て1990(平成2)年に称名寺境内から現在の場所に移り、新装開館したことが主な収蔵品とともに紹介されている。
同文庫学芸課長の向坂卓也さんがビデオの内容を補足。仏典を書き写した紙の裏を使って称名寺に宛てた手紙が残っており、「会議から戻ってくたびれたから、細かいことは後で」とか、出産前の不安、相手の好き嫌いなど日常の何気ない心情ややりとりがしるされた貴重な資料だと話した。
特別展は、「金沢八景」の名前のもとになった中国の名勝「瀟湘(しょうしょう)八景」と、金沢北条氏とゆかりのある中国の西湖(せいこ)にちなむ「西湖憧憬(しょうけい)」が開催中(11日まで)。山水画の屏風や掛け軸などを見て鎌倉・室町時代の東国文化の一端に触れた。
トンネルを抜け、今は広場になっている旧文庫跡、金堂、仁王門で詳しい説明を聞いた。阿字ヶ池に架かる平橋と反り橋は塗り替え工事を行うため通行できなかった。寺の全盛期には37あった建造物が今では五つという。
雨をしのげる場所で遅い昼食を食べ、仁王門からの金沢シーサイドライン・海の公園南口駅まで歩く。無人運転でゴムタイヤで走る車両に乗り、1駅先の野島公園駅で下車、横浜市の文化財になっている旧伊藤博文金沢別邸に向かう。
最も格式が高い客間に集められ、天井が約3メートルと高い、ベルギーから輸入したガラスの戸がここだけにある、欄間は鳳凰(ほうおう)の透かし彫り―という「格式」を確かめ、隣の客間で開かれている博文の業績を写真などでたどるパネル展(25日まで)、漆塗りの便器を備えた客用トイレ、居間棟、台所棟と見て回った。