天空の絶景 蔵王・お釜ツーリング(その2)

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 蔵王町遠刈田温泉のホテルでは午前5時半ごろ、目が覚めた。いつものようにベッドの上でストレッチ。温泉に軽くひたってから朝食バイキングの会場へ。食欲は衰えておらず、ひと安心=写真は絶景を見せた蔵王のお釜。

 身支度を整えて玄関を出ると、霧雨が降っていた。朝のテレビの天気予報では宮城県は「曇りのち晴れ」。気を取り直して雨具を身に着け、フロントで聞くと、「下は霧でも、お釜付近は晴れている」とライブ映像で確認してくれた。

 半信半疑で午前8時20分、愛車にまたがる。ホテル前の赤い鳥居をくぐり、濃い霧の中の蔵王エコーラインを上る。

 左手に蔵王寺がぼんやりと見え、境内と思われる空き地にバイクを置く。リンを鳴らすと住職さんが法衣姿で出てきて、寺の由緒やこの辺一帯が昔は火山岩に覆われ「賽の磧(さいのかわら)」と呼ばれていたことを話してくれた。

 しかし、なにぶんにも視界が悪い。寺の周辺を少々歩き回ってから、10メートル先が見えない山岳道路を上り続けた。数十分たち、乳白色の世界から脱出。目に痛いほどの青空と木々の緑が飛び込んできた。

エコーラインの右手に蔵王山頂お釜入り口となる蔵王ハイラインへの導入路があった。この分岐点の手前に設けられた駐車場にバイクをとめる。雲海の上に白い飯豊連峰が望める。駐車場では登山準備をするグループがいた。

 エコーラインを横断すると、高台に向かう木の階段がある。「大黒天」と名付けられた登山道の入り口。登山コースの案内板のあるところまで登ってみた。五色岳の荒々しい岩肌が目の前に広がった。

 蔵王ハイライン蔵王山レストハウスの駐車場付近に至る2.5キロの有料道路で、バイクは380円。午前10時ごろ着いたが、同好の士は見当たらなかった。

 レストハウスの裏の一本道を少し進むとエメラルドグリーンの水をたたえたお釜が見える。火山灰と岩だらけの斜面を下りるとお釜の展望台。右の坂を上ると刈田嶺(かったみね)神社奥宮に達する。そこは刈田岳(かっただけ、標高1758メートル)の山頂でもある。

 お釜の展望台はバスツアーの団体客でにぎわっていた。70代と見える男性は「朝の雨でどうなるかと思っていた。素晴らしい景色を見られて、すごく得をした」と話した。

 奥宮にも行った。拝殿近くに取り付けてある温度計は12度を示していた。山頂には石積みがいくつもある。わずか下に避難小屋が見え、登山者が腰を下ろしていた。

 レストハウスの付近でツアーガイドらしい女性が、「お釜と朝日連峰、飯豊連峰の両方がこんなにはっきり見られるのは珍しい」と教えてくれた。高山植物の女王と呼ばれるコマクサの花を遊歩道の脇に見つけることもでき、バンザイを叫びたい気分に駆られた。1時間を超える長居ともなった。

 コマクサは、遠刈田温泉への帰途、駒草平でもたっぷりと見た。行きは霧の中だったが、帰りは晴れ渡り、赤茶色の土と岩石の大地に孤高に生きるコマクサをよその家族と競うように夢中になって探した。

 お釜を源流とする落差28メートルの不帰(かえらず)の滝、2段に落ちる振子滝もはっきりと見えた。

 ここからエコーラインを下ると間もなく霧の中に突入し、いくつかの滝の展望台は通過。下界は霧が消え、遠刈田温泉街に入ると正午を過ぎていた。「賛久庵(さんくあん)」の看板が目に留まり、下調べにあったそば屋と思い出した。

 この時、今日の旅の最後は、きのう雨で通過した遠刈田温泉街を散策してグルメも楽しむことにした。まずは「蔵王のそば」。そばの種類で悩みたくないなと思い、一枚メニュー「夏季限定 うなぎのせ ねばとろそば」(税別1250円)を見ていると、「それにしますか」と問われ、つい「はい」と答えてしまった。ウナギのほかはとろろ、オクラ、モロヘイヤを盛る。

代金を払う時、店主が「今月から始めたばかり」と言い、常連客が新メニューのヒントをくれることやウナギの仕入れ先まで話す。もてなしの気持ちの強いまちなのかな。

観光案内所の向かいの無料駐車場にバイクを置き、すぐそばの蔵王刈田嶺神社に寄る。共同浴場「神の湯」の無料の足湯は見るだけ。蔵王通り商店街の奥に豆腐店「はせがわ屋」を見つけ、店に入って「豆乳ソフトありますか」。一般的なソフトクリームのように機械から絞り出す。1個280円。

ソフトクリームをなめながら、来た道を戻る。「壽(ことぶき)の湯」という共同浴場がもう一軒あった。新しさと古さがうまく同居して元気のある商店街に見えた。

午後1時半、遠刈田温泉を出発。国道457号一本で白石市に出た。国道4号から東北道・白石ICに入り、安達太良SAで休んだ後は休憩なしで午後6時半ごろ西東京市の自宅に着いた。この日の走行距離は389キロ。
(下の写真は刈田岳山頂と奥宮、お釜への遊歩道脇のコマクサ)
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