朗読会は19回目。田中さんが選んだのは、作家と作品のモデルになったと思われる女性をめぐる短編小説『恥』(昭和17年)と、裏商売を手伝って羽振りのよい雑誌編集者の愛人縁切り作戦を描いた『グッド・バイ』(昭和23年、未完)。
原稿には、女性の発言のかぎかっこを赤色にしたり、音響効果の入る箇所を書き込んであったりと、手の内を明かしながら書き進む太宰の文体にも似た演出。幕あいと終演後には大勢の観客が舞台に近づき、興味深そうに原稿に見入った。