雨降っても花なくても庭園の趣に満足 小石川後楽園

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小石川後楽園の円月橋。江戸初の上水道神田上水跡に架かる

 東京・文京区観光協会主催のまち歩きイベント「今も残る大名屋敷の庭園・小石川後楽園とその周辺を巡る」が10月6日にあった。

 

 都と東京観光財団が都内の観光協協会などのまち歩きツアーを集め、地域の観光振興につなげようとする統合イベント「ぶらっTokyoさんぽ」の一つだ。日本語コースは全部で35あり、文京区観光協会は初参加。

 

 小石川後楽園コースは応募した先着20人が、区役所の入る文京シビックセンターに集合。地上105メートルの25階展望ラウンジから見える風景の説明を聞き、午前10時すぎに2班に分かれて出発した。

 

 展望ラウンジから見た東京スカイツリーは半分近く雲に隠れていた。出発して間もなく雨が降り始め、菅原道真をまつる北野神社(牛天神)からは雨中のツアーとなった。

 

 北野神社から10分ほどで小石川後楽園の西口に。小石川後楽園は江戸時代初期、初代水戸藩主の徳川頼房と息子の二代藩主光圀(みつくに)が江戸の中屋敷に造った日本庭園。

 

 徳川家の家紋「三つ葉葵(あおい)」の元になったフタバアオイこぢんまりした群生を庭園入り口手前で見て、琵琶湖に見立てた池をしだれ桜から時計回りで歩いた。

 

 桜はもちろん梅やカキツバタハナショウブ、フジなど春の庭園を彩るであろう花はなく、モミジの紅葉には早すぎた。それでも、色あせたヒガンバナ脱穀してはさ掛けした稲束がなんとか、この季節を教えてくれる。

 

 だが、四季にかかわりない魅力が、この庭園にある。「見え方の違いを楽しんで」とガイドさんの言う通り、池の中に蓬莱島(ほうらいじま)と竹生島を置く大泉水(だいせんすい)の景観がそれだ。

 

 円月橋は明の儒学者朱舜水の設計といわれ、造園当時の姿をとどめる。このことは、橋の下の水路は日本で最初の上水道とされる神田上水の跡でもある。北野神社の階段を下りてから、現在は地下水路になっているという神田上水の道を通ったが、それがここで見られ、400年の時空間が一気につながった。

 

 私の班は全員が文京区外か他県在住だったこともあってか、雨もものかは2時間、約2キロのツアー中、みんなが興味深そうにガイドさんの話に聞き入り、質問していた。

 

 小石川後楽園のように特別史跡特別名勝の両方に指定されているのは、東京ではほかに浜離宮恩賜公園だけ。ガイドさんは歴史的・文化的価値は「小石川後楽園の方が上」と力説。こんなナマの地元愛を聞くのも楽しい。

 

 観光団体の企画ツアーガイドは区報など区内限定の広報が多く、区外の都民の目に触れにくい。他の区市町村も同じ事情を抱えているに違いない。今回の共同イベントの成功を祈る。