仏教文化の連続公開講座再開 武蔵野大

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ミャンマーを中心に仏教徒社会の近況を話す小島敬裕教授

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小島教授=津田塾大学のホームページから

 新型コロナウイルスの影響で昨年度中止となった武蔵野大学仏教文化研究所主催の連続公開講座「世界の国々と仏教」の第1回が7月3日、同大武蔵野キャンパス(西東京市)であった。

 

 検温や長机に2人掛けなどの感染防止策をとり、約50人が受講。「ミャンマーに生きる人々の暮らしと仏教」と題する小島敬裕(たかひろ)津田塾大学教授の話に聴き入った。

 

 小島教授は20年前にミャンマーに留学したときなど2度の出家を経験。儀礼の写真を見せながら、「一定の条件を満たしていれば誰でもが好きな寺で出家でき、見ず知らずの人とも関係を築けるのが上座部仏教の魅力」と話した。

 

 上座部仏教はインド北部からスリランカを経て東南アジア大陸部に伝わり、個人が出家して悟りをひらくことが目的で、僧侶の戒律は厳しい。中国から日本にもたらされた大乗仏教とは異なる。

 

 上座部仏教徒社会では、生活を営む在家者たちが出家者に寺院の建築や修復の費用とか食事を寄進して功徳を積むと、この世でよい結果(救済)が得られるという出家者と在家者の相互依存関係が、タイをモデルとした先行研究で示されている。

 

 小島教授はミャンマーに隣接する中国雲南省徳宏州で、1寺院あたりの出家者数(見習僧を含む)がミャンマーやタイなどの同じ上座部仏教徒社会の中で極めて少ないことに着目して現地調査した。

 

 その結果、徳宏には男子は1度は出家すべきという考え方がなく、正式僧になってから還俗(げんぞく)するのは恥とするように出家慣行がタイなどと違っていた。

 

 出家者がいないため仏塔、仏像、仏典というブッダにまつわる「聖遺物」と在家者の直接的な関係が重視され、「ホールー」と呼ばれる在家のリーダーが布施や葬式などの仏教儀礼で重要な役割を果たしていることもわかった。

 

 ミャンマーでは、こうした「徳宏モデル」と出家者と在家者の二極関係でとらえる「先行研究のモデル」の両方が存在するが、国の政策として出家者の説法が重視される傾向という。

 

 またミャンマーでは制度上、公認9教派によるサンガ(出家者集団)機構が全国のサンガを管理しているが、小島教授は中国・徳宏とミャンマーに国境を分けた盆地のように「公的には存在しないローカルな教派のネットワークが水面下で仏教実践(行いとしての仏教)に大きな役割を果たしている」と述べた。

 

 感染対策のため質疑応答はなかった。

 

 連続公開講座の2回目は蔵本龍介東京大学准教授が「ミャンマー・出家者の世界」と題し、8月29日午後2時から同大で話す。聴講は無料。