映画「宮本武蔵」のお通に八千草薫をしのぶ

 7月17日、前日に続き三鷹市芸術文化センターに足を運んだ。八千草薫(1931~2019)が「お通」を演じる映画『宮本武蔵』(1954年、東宝)を見るためだ。

 

 三鷹市スポーツと文化財団は一つのテーマのもとに古今東西の映画の名作を上映している。今年のテーマは「惜別、日本の名優」。八千草薫を皮切りに来年5月の高倉健主演『遥かなる山の呼び声』まで、1カ月おきに6本の予定が組まれている。

 

 彼女が2年ほど前に亡くなっていたことは記憶になかったし、見た出演作品もほとんど彼女の晩年だったのに、なぜか彼女の若い頃を見たくなった。それは40年以上も昔、たぶん酒飲み話で同業他社の先輩が「一番好きな女優」と言ってはばからなかった声がたびたび再生されてきたからだと思う。

 

 若い頃の八千草薫はよく「可憐」と評される。スクリーンの彼女は確かにかわいかった。当時22~23歳。主催者が当日観客に配ったチラシによると、宝塚歌劇団に在籍しながら映画などに出演し、「お嫁さんにしたい有名人」ランキングでたびたび1位になったという。今、「おばあちゃんになってほしい有名人」番付があれば、やはり最上位級にランクされるのではあるまいか。

 

 映画全編では武蔵役の三船敏郎の存在感が大きい。ムサシがまだタケゾウと呼ばれて村の悪童だった時代から、生まれ変わって武者修行の旅に出るまでが描かれている。映画が「一乗寺の決闘」「巌流島の決闘」へと続く3部作とは知らなかった。