映画「男はつらいよ」の主人公「寅さん」の故郷・葛飾柴又を歩くツアーが10月6日にあった。全国紙の新聞社の読者参加型事業に応募し、初めて訪れた。
午前10時、京成電鉄柴又駅の改札口に集合。駅前広場に立つ「フーテンの寅」像と「見送るさくら」像を皮切りに、境内全体が前方後円墳の上にある柴又八幡神社、矢切の渡しなどを見渡せる江戸川土手、富豪が建築と庭園にぜいを尽くした山本亭、「くるまや」などのセットを撮影所から移設した葛飾柴又寅さん記念館(山田洋次ミュージアムを併設)を回る。
昼食場所は、男はつらいよシリーズの第1~第4作まで撮影に使われた老舗「とらや」で、デザートは名物の草だんご。
とらやを出て、柴又街道から柴又帝釈天までの参道両側にずらりと並ぶ土産物店・料理店を右に左にと見て歩く。
帝釈天の楼門「二天門」をくぐる。正面に帝釈堂、その左手前に見事な枝を三方に伸ばす樹齢400年超えという「瑞龍(ずいりゅう)の松」を見て、帝釈堂に靴を脱いで上がる。
回廊を右手に進むと、内殿の3面の外壁を精緻な木彫が取り巻いている。昭和初期の木彫名人10人が法華経の説話を題材に彫り上げたという。
帝釈堂裏手の大客殿の内部と、その前に広がる日本庭園「邃渓(すいけい)園」を回廊から見て午後3時20分ごろ、本堂前で解散した。
主な立ち寄り先だけでも数多いが、コースには柴又用水や人車鉄道跡、葛飾区が開設した外国人向け宿泊施設、新型コロナウイルス禍で閉店し区が買い取ることになった老舗料亭、有名人の名を刻んだ玉垣なども含まれ、見どころが満載だ。
ガイドの説明が深みを増してくれる。地元在住で東京シティガイドの資格を持つ男性は、草だんごの人気一番店など個店のエピソードをささやいてくれた。声を無線で伝えるイヤホンガイドは、コロナ下で参加者同士の密を避けるだけでなく、内緒めいた話の時に有効だ。
帝釈天参道に交差する柴又街道(都道)に拡幅計画があり古い木造店舗の建て替えなど景観問題が起きていることは知らなかった、帝釈堂の彫刻群は粗雑な修復が文化財評価の妨げになっているという。
今回のツアー、記者が様々な街道を歩き話題を連載する紙面と連動し「秋の新コース」として20人を募集した。大手新聞社の企画なのに参加が7人とは意外だった。ある女性は「(緊急事態宣言の解除が確実だった)1週間前にダメ元で申し込んだら、『今日中に料金(税込み9900円)を入れてくれれば』との返事。参加できて驚いた」と話した。新型コロナ恐るべし、ということなのだろうか。