「西行の和歌と仏教」というテーマにひかれ、10月17日、武蔵野大学の日曜講演会に初めて参加した。
600回を超える講演会の長い歴史や静かな西行人気に新型コロナウイルスの緊急事態宣言解除があってか、雨の中、約150人が武蔵野キャンパス(西東京市)の会場に集まった。
講師は中世の和歌を研究している同大学文学部特任教授の寺島恒世(てらしま・つねよ)氏。
寺島氏によると、西行(1118~1190)は文学や歴史学、宗教学、哲学などの多方面から考えられてきたが、実像は定かでない。とりわけ和歌と仏教の関りについては議論が多いという。
寺島氏は専門家の著述や西行の作品を示しながら出家の動機や出家者としての立場、和歌と仏道の関係などについて多様な見解を紹介した。
そのうえで「和歌即仏道」ではなく、「ずっと和歌にこだわり、仏教にもすごくこだわった存在」と語り、西行はこれからも大いに人々の心をとらえていくと思う、と結んだ。
私が高校時代に古典の授業で習った西行は歌人だった。そこで「願はくは花の下にて春死なんそのきさらぎの望月のころ」を覚えたのは、私の誕生日だったことによる。
たったそれだけの記憶が、長い年月を飛び越えて縁を結んだ講演会であった。