ミャンマー仏教 修行支え合う出家者と在家者

f:id:amullar:20211031223124j:plain

出家者の托鉢について説明する藏本龍介准教授

 仏教国のミャンマーで、出家者はどんな生活をして社会とどう関わっているのか―。東京大学准教授の藏本龍介氏が講師を務める公開講座が「ミャンマー・出家者の世界」と題して10月23日、西東京市武蔵野大学武蔵野キャンパスであった。

 

 同国の人口は日本のほぼ半分の約5100人で、その80%強が上座部仏教徒とされる。上座部仏教は日本の大乗仏教と異なり、仏像の中心は釈迦牟尼仏(しゃかむにぶつ)、修行者の最高の姿は阿羅漢(あらかん)、そして出家者と在家者(一般信徒)の区別が厳格なことだという。

 

 ミャンマーでは国民100人に1人は出家者とされ、「律」を守る生活、仏典学習、瞑想(めいそう)が修行の三本柱。

 

 このうち律は性欲と物欲を敵とし、性行為は禁じられ、経済活動や消費生活にも大きな制限がある。食事は午後に固形物を食べてはならないし、托鉢(たくはつ)で差し出されたり、在家者らが僧院でつくったりした「布施されたもの」以外は食べてはならない。

 

 15年前から現地調査に入り、出家生活を体験したという藏本氏は、律を守る生活について「不自由に見えるが、何も考えなくてよいのはある意味で自由だ。衣や食、仕事と今の方が疲れる」と参加者を笑わせ、「出家が嫌なら還俗(げんぞく)して在家者になればよい」と話した。

 

 実際、青少年期に一時的に沙弥(しゃみ)として出家してから還俗するのが慣行になっているという。

 

 出家者は貧困や教育機会に恵まれない村落部の少年が多く、青年期にかけて教学に専念して仏教試験の合格を目指す。教学が終わると、帰村して後進を育てたり僧院の教師になったりと思い思いの道を進む。

 

 藏本氏は、出家者一般について、「在家者から布施を受け取る」という役割により、在家者に「功徳を積ませる」と指摘。ミャンマー仏教の世界とは出家者と在家者の「持ちつ持たれつの世界」とまとめた。

 

 国軍のクーデターによる国情混乱の行方に、仏教や出家者はどのように関わっていくのだろうか。主催者は新型コロナウイルスの感染防止を理由に参加者との質疑応答を取りやめとし、講師も「語るときりがない」として触れずじまいだった。