春風亭昇太で笑う 三鷹で独演会

 2月11日、春風亭昇太独演会を聴きに三鷹へ行った。神田伯山に続く1カ月に2度の演芸通いは普段ならぜいたくだが、新型コロナによる巣ごもりに飽き飽きして外出機会を作った。

 

 昇太さんが日本テレビ系の演芸番組「笑点」の司会者であることは知っているが、生で見るのは初めて。洋服姿で舞台に飛び出してのオープニングトーク、1席目を終えても緞帳(どんちょう)を下ろさず、客の目の前、高座の上で着替えし、何ごともなかったかのように2席目に入るという珍しい光景も見せてもらった。

 

 舞台に現れ開口一番は「ぎりぎり、セーフ」。芸能人やタレントが次々とコロナに感染し、昇太さんも10日間休んだ。熱は最高で36度7分だが、医師に陽性を告げられた時の精神的ショックは大きかったという。

 

 これほど長く休んだのは「何十年ぶり」で、2週間一滴も酒を飲まなかったのは「42年ぶり」という。計算すると、二十歳から愛飲家だったのか。

 

 このあと、前座は二ツ目の春風亭昇吾さんが『鈴ヶ森』、昇太師匠が着物の着替えショーを挟んで『長命』と『一眼国(いちがんこく)』の二席を語った。

 

 美女の婿になると次々と早死にするわけを、ご隠居が遠回しにエロっぽく説明するくだりは大人の笑いを呼ぶ。ご隠居とたぶん八五郎との掛け合いの「間」が絶妙。

 

 一眼国のマクラで、「古典落語は今の時代に合わない」として、登場人物の「六部」について平安時代の「六十六部」から解説したのは新鮮だった。

 

 だが、昇太さんのマクラは、やむを得ず教養を伝えもするが、本編に増して笑いをくれるものだろう。思わずメモをした、ある「笑点」出演者の迷名、いや名言――。色紙に一言「寝ていて転んだためしなし」。好きな言葉「ハードルは高ければ高いほど、くぐりやすい」。

 

 中入り後は、そろばん占いの八百屋を主人公とした『御神酒徳利(おみきどっくり)』。人情噺もじっくり聞かせる。

 

 700人余りが入る会場は100%の席で販売され、昨年までの1席空けに比べると「密」の圧迫感をぬぐえない。加えて、開演前であっても会話する隣の親子が怖い。開演後はそれらを忘れ去り、笑いの世界に引き込まれた。マスクを手で押さえて笑った。