奈良・法隆寺 焼損した壁画 収蔵庫での一般公開へ課題出そろう

 火災で焼損した奈良・法隆寺の金堂壁画を保存する収蔵庫の一般公開について、人数や滞在時間、空調設備の設置など一定の条件を整えればできる見通しが一歩前進した。金堂壁画保存活用委員会の小椋大輔・保存環境ワーキンググループ座長が2月26日、昨年限定公開した成果を東京都内で開かれた講演会で報告した。

 

 金堂壁画は7世紀後半から8世紀前半に描かれたとされ、アジアの古代仏教美術を代表する作品。1949年の火災で焼損した後、52年に境内に造られた収蔵庫で保管され、国の重要文化財になった。

 

 収蔵庫は鉄筋コンクリート造り一部2階建て。西室、西南室、中央室などがあり、外陣の大壁は中央室に移された。当初、公開を前提に建設されたように、壁画の公開は法隆寺の一貫した意向で、世界遺産登録された翌94年に抽選で特別公開、2021年にクラウドファンディングで寄付した人たちに限定公開とこれまでに2度公開した。

 

 また2015年に文化庁朝日新聞社の協力を得て保存活用委員会を設け、一般公開に向けた調査研究を進めている。

 

 前回の限定公開では、それまでの研究結果を踏まえたコンピューターシミュレーションを使い、期間は11月に11日間、入室は30分間隔としで各室の滞在は5人、1日の見学者は合計50人と前々回より大幅に絞った。

 

 湿度の高い外気の侵入を抑えるため新たに西南室の入り口に前室を設け、簡易な空調設備も入れた。

 

 小椋座長はこの結果を講演会で報告。それによると、温度・湿度が制御され、見学者の入室による熱、水分、二酸化炭素濃度が大幅に抑制された。とくに新型コロナウイルスの感染リスクの目安となる二酸化炭素濃度は、窓の隙間を通した自然な換気ですみ、窓開けによる換気を必要とするレベルまで上がらなかったという。

 

 今後の一般公開に向けて、小椋座長はシミュレーションモデルの開発や中央室の入り口にも前室を設けること、より過酷な条件や雨天などにも対応できる前室と空調設備の設置を挙げた。

 

 このような収蔵庫内の温湿度の環境をよくするための建築・設備などの改修を検討し、「次年度中に提言をまとめたい」と述べた。