口から阿弥陀仏 空也像 背中も見られる特別展

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空也上人立像について解説があった特別講座=3月18日、東京国立博物館

 東京・上野の東京国立博物館で開催中の特別展「空也上人と六波羅蜜寺」を鑑賞するための特別講座「空也の寺と運慶のアトリエ」が3月18日、同博物館であり、170人が参加した。

 

 講師は仏像研究の第一人者といわれる鎌倉国宝館館長の山本勉氏。約50年ぶりに京都・六波羅蜜寺の外に出た「空也上人立像(くうやしょうにんりゅうぞう)」(国重要文化財)が鎌倉時代を代表する仏師、運慶の四男、康勝(こうしょう)の作であることから、同寺所蔵の仏像や運慶作と伝えられる仏像、運慶一門と寺の関係などについて解説した。

 

 この中で、山本氏は、特別展に出ている「四天王立像」(国重文)のうち持国天は手足の上げ下げや衣が東寺講堂の持国天と似ており、「日本における特定の像の模像の初例か」と述べた。

 

 講義の後、特別展へ。会場は新型コロナウイルス感染症対策のため人数を区切っての入場。空也上人立像が見渡すように、左右と正面の壁際に展示物が並ぶ。

 

 空也は平安中期の僧侶。京の市で、来世において極楽浄土に往生することを願う浄土教を説いた。没後1050年に合わせて今回の特別展となった。

 

 空也立像は、口から6体の小さな阿弥陀仏が飛び出している姿が特徴的で、高校の日本史教科書にも写真が見受けられる。

 

 山本氏は空也像の表情を「奇跡を写実的に表したのではないか」と話したが、法悦というよりは苦しそうに見える。鹿皮の衣をまとい、左手に鹿の角を付けたつえという平安末期の念仏行脚の僧のいでたちを改めて確認する。

 

 像は全方向から見られるので、後ろに回ると衣のゴワゴワ感がよくわかる。ただ像高が117センチと低いせいか台座が高く、6体の仏像を見るには単眼鏡があった方がよい。

 

 ほかに、入場してすぐ対面するのはほぼ等身大の「地蔵菩薩(ぼさつ)立像」(国重文)。木彫の鋭さを消した彫り口の頭部は小さく丸顔、スラリとした立ち姿は天平復古のプロポーションという。

 

 空也像の正面は薬師如来坐像(ざぞう)と四天王像、右側には運慶作「地蔵菩薩坐像」や巻物を広げる「伝平清盛坐像」(いずれも国重文)など平安・鎌倉期につくられた仏像、絵画など約20点が展示されている。

 

 特別展は5月8日まで。3月22日と月曜は休館(3月28日、5月2日は開館)。一般1600円など。