「見え方が変」 眼科でわかった脳卒中

 7月20日、朝起きて廊下に出、居間の方を見ると、食卓に着いているはずの妻の姿がない。妻は明るい外の光を背に座っているから、遅く起きる僕にはいつも逆光で見にくいのだが、この時はシルエットさえとらえられず、透明人間であるかのように透けていた。

 

 少し間をおき視線をずらすと、いすに座る彼女の上半身を認識できた。「あれ、いたの。一瞬見えなかった」と話すと、すぐ病院へいったほうがよいと強い口調で言う。日頃から眼の不調に悩んでいる人の言葉に気おされ、朝食に手をつけずに自宅近くのひばり中村眼科に向かった。

 

 診察開始前なのに、すでに10人を超える患者が待合室にいた。予約していないから長時間待ち、視力や眼底、眼圧などいろいろな検査を受けた。それらの検査結果から院長は「白内障はあるけれど、今回の症状の原因は見当たらない」。

 

 そこで、検査の合間に待合室でテレビを見ていて、画面下に出るテロップの左端の1~2文字が見えないことを告げた。

 

 ここで視野の検査を受けたことが、「脳出血」を突き止める端緒になる。検査では視野の左半分が見えにくくなっており、右目も左目も同じ結果であることから「脳梗塞の疑いがある」という。

 

 院長は近隣の3つの総合病院の名前を挙げ、選ぶように言ってくれるが、どこも通院さえしたことがないから答えられずにいると、武蔵野赤十字病院武蔵野市)と連絡を取り、紹介状を用意してくれた。

 

 「今すぐ行ってください」「1時間で行けますか」とせかされるので、家に取って返し、外出していた妻にメモを残し、バスでJR武蔵境駅、駅からはタクシーで赤十字病院に向かった。2度目に家を出たときは午後2時半を過ぎていた。