記憶力に冷や汗 認知機能検査

 運転免許を来年3月に更新するため、満75歳以上の人に義務付けられた認知機能検査を受けに10月20日、警視庁の府中運転免許試験場に行った。

 

 指定された「午後3時集合」よりも30分以上早く着いたのに、受付前は長い列。2時半の組よりも3時の組の人の方が多い。高齢者はせっかちなのかな。後で1組15人とわかった。

 

 予定時刻よりも早く受検会場の講習室に入るよう促された。1人用の机と椅子。検査のお知らせはがきと免許証を机の上に出させ、住所・氏名などの必要事項を所定の用紙に自書させ、検査料1050円を徴収。

 

 検査内容の説明があった。スクリーンに4こまの絵が映し出され、受検者に問いかけながら「これは万年筆」と描かれたモノの名前を確認し、「よく覚えてください」と言って4種類の画像を見せた。

 

 検査担当者は「昨日の夕食のおかずは何でしたか」と受検者のひとりを指さすと、即答に近い速さで「サンマ」。これを受けて「私は時々忘れます」と受検者たちを和ませる。女性でも自分が何の料理を作ったか思い出せない人がいたと言う。

 

 腕時計を外すよう指示され、検査の冊子が配られた。てっきりさっき見た絵の記憶力が試されるのかと思ったが、それは2番目。最初は1から9までの数字のうち2つ、次に3つの数字を、ランラムに並んだ数列から斜線で消していくものだった。

 

 担当者が「はい、そこまで」と言うまでの制限時間内にいくつ消せるか、正確さとともに速さも求められる。これが「判断力」の検査なのだろう。私は正確さに気をとられて時間がかかり、最後の数列までたどり着けなかった。

 

 絵を思い出す記憶力の検査はもっと悲惨なものだった。ノーヒントで答える方は半分がやっと。16個のすべてに「果物」「家具」などのヒントが付いている方も二つ、三つ増えたかどうかといったありさま。

 

 終了後、「半分しか答えられなかったのですが…」と恐る恐る質問した人がいた。その気持ちが痛いほどわかった。

 

 腕時計を外させたのは、最後の設問に「今は何時何分か」とあるのを見て納得。私は3時25分と記入したが、どの程度の誤差までが許容範囲なのだろう。

 

 検査結果の通知書は点数を出さないことや、認知症のおそれのない人は青色、基準点に達せず専門医の診断が必要な人にはピンクの紙が渡されると事前説明があった。この組は全員「合格」だったが、内心穏やかでない人もいたことだろう。

 

 この検査では本番そっくりのテストを盛り込んだ「攻略本」が市販されており、担当者はそれを覚えてきたと思われる人がいると確信に満ちた様子で話した。検査は16枚セットのものが4パターンあるというから、記憶するには並々ならぬ努力をしたことだろう。正しい態度とは思えないが、その熱意には頭が下がる。

 

 さあ、次のステップは自動車学校での高齢者講習だ。