農業体験から環境問題考えよう 農業講座

自分が写っている写真を選ぶ受講生。後日、絵はがきになる

 西東京市谷戸公民館主催の「農業を知る講座」は12月6日、同館で座学があり、環境カウンセラーの小野紀之さんが「都市農業のこれから」と題して講演した。

 

 小野さんは農業を巡る新しい展開として「市民園芸学」という学問分野が生まれ、地域コミュニケーションの形成など社会課題の解決に役立っており、貸農園などのビジネスも生んだと指摘。

 

 農業・農地について、都市農業の多様な役割が評価され、都市住民の4人に3人が「保全すべき」と考えていると農林水産省の調査結果を紹介。

 

 一方、地方では農地を宅地にして人口流入を図ることに向かいがちだが、若い世代には少量多品種で洋菓子店と契約栽培する人が出てきたという具体例を示し、市場出荷一辺倒の農産物供給に変化が生まれているとした。

 

 都市農業の最大の役割は「新鮮で安全な農産物の供給」としたうえで、身近な農業体験の場を提供することで都市住民のコミュニケーションづくり、生命を考えることなど子どもへの教育、高齢者の生きがいづくりに役立つと強調した。

 

 また都市農地は災害に備えた開放空間の役割も大きく、地震時の避難場所や仮設住宅の建設用地として利用できるよう地方自治体と農家・農協の間で協定を結ぶ取り組みが進んでいる。

 

 小野さんは、東京都が行った都内の農業・農地の多面的機能評価(2015年)の評価額(年間)について解説。総額2465億円のうち農業生産機能は303億円で12%にとどまり、公益的機能への期待や評価の大きさがわかる。

 

 公益的機能の中でも環境保全の評価額は527億円と最大で本来の農業生産を上回る。ヒートアイランド現象やゲリラ豪雨の影響が大きいとみられる。「防災」と「生物多様性保全」も300億円台となった。

 

 多面的あるいは公益的な役割が市民に認識されてきたのに対し、公的資金の投入や行政の具体的な施策は立ち遅れている、と小野さんは指摘する。

 

 このような状況を踏まえ、「環境」を考える場合は、例えば水を無駄に使わない、合成洗剤を使わないことで水を汚さない―といった一人一人ができることを実践し、「西東京市を農業と共存できるまちにして」と締めくくった。

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 裏面全部が農業体験の現場写真という絵はがきを作るための写真選びと申し込みが、この日の講座前後に行われた。

 

 絵はがきづくりは講座の一環で、農業に携わる楽しみや収穫の喜びを写真で切り取り、それを知人に見てもらうことで都市農業の理解者を増やそうというのがねらい。

 

 小野さんが4台のカメラを受講生たちに貸し、小野さんが撮ったり受講生同士が撮り合ったりしたすべての写真を8枚ずつ大きな紙にまとめ、注文を受ける。注文は受講生1人3枚まで。無料で絵はがきにしてもらえる。

 

 受講生全員が収まった絵はがきは先行して開講前に配布された。この日申し込んだものは20日の講座で配布できる見込みという。