前半は新作落語の「ストレスの海」と古典の「胴切り」。「ストレスの海」は、夫の健康を思いやり、ストレスを解消してやろうとあれこれ奮闘する妻が夫を海に連れ出し、ボムボートで沖へ出る。そこで夫の運命が…。
荒唐無稽な話ではないので大笑いはない。むしろ現代を生きる自分と重ね合わせてストレスが気づかないところにあったり、死に直結したりする怖さを教えてくれる。
新作落語について昇太さんは「作った人が演じれば面白い」と言った。作者に遠慮なく改良を重ねられるということなのだろう。
この一席が終わると、昇太さんは高座に立って着替えを始めた。羽織を脱ぎ、帯を解き、着物を脱ぐ。男性の長じゅばん姿を初めて見た。なかなか色っぽい。
楽屋に下がって着替えをすると、その間、誰かを高座に出さなければならず、「無駄に諸経費がかかるでしょ」。着替えも芸のうちなのかな。
二席目の「胴切り」は、辻斬りに切られた上半身と下半身の二つに分かれた体がそれぞれ風呂屋の番台とコンニャク踏みと格好の職を得る。しかしお互いに不便もあって…とこちらはギャグ漫画顔負けの展開。
後半は、チラシで演目を予告していた「愛宕山」。旅の途中、素焼きの皿を投げて輪の中を通す「かわらけ」という遊びに、旦那に付いていった芸人が挑戦。旦那が投げた小判25両を谷底に拾いに行く芸人が、行きは傘で飛び下り、帰りは竹のしなりを利用し宙を飛んで戻る。
この演目は話芸以上に体を使ったパフォーマンスが見どころ。皿や小判を投げるさま、小判を捜すさま、着物を割いてひも状のものを何本もつなぎ合わせるさま――と、膝立ちで体を大きく動かすシーンの連続に、客席から大きな拍手が送られた。
本編を演じ終えた昇太さんは「やる気のあるところを見せなきゃ。それにしてもこんなに汗をかくとは」と手拭いを顔に当てた。
昇太さんは噺(はなし)家仲間で新作落語のグループを作っており、古典落語の続きを創作する話が持ち上がっているという。「それができて、やる気があったらいつか通しでやりましょう」と約束した。