病気吹き飛ばす熱演 権太楼独演会

 あれっ、少し太ったような…。高座に上がった柳家権太楼さんは病み上がりだった。

 

 3月12日、三鷹での独演会。昨年の今頃は同じ高座で新型コロナに感染したことをネタにしていたが、今年は肺炎(公式ツイッターによると間質性肺炎で昨年11月に緊急入院)の治療薬の副作用で「顔がむくみ、太ってきた」。

 

 権太楼さんは私より1歳年上。私は今のところコロナから逃れているが、他の病気に忍び込まれやすくなり、最近後期高齢者に仲間入りした。「やぁ、ご同輩」と権太楼さんに話しかけたい気分だ。

 

 この日の演目は前半が「一人酒盛(さかもり)」。前日、横浜で演じた2席のうち、「気合が入り、面白かった」1席とマクラで話した。

 

  いただき物の超高級な酒を試し飲みした男が、相伴させた飲み友達をそっちのけで全部飲み干した揚げ句、「あいつは酒癖が悪い」とサゲる。次々と繰り出されるべらんめえ口調と、ダイナミックな酔態の変化が爆笑を誘った。

 

 中入り後の2席目は「大工調べ」。滞納した家賃のかたに大工道具を大家に持っていかれた、ちょっと間抜けな男。それを取り返そうと大家と直談判する親方。わずかな不足金を理由に頑として譲らない大家。緩急自在に3人のやりとりを語るくだりは圧巻さ。「3年以上やっていないネタ」とはとても信じられない。

 

 終演時には「どうでぇ、ご同輩」と師匠に元気を見せつけられた思いだった。