新緑の小金井公園を歩く

ジョギングや散歩に絶好の季節となった東京都立小金井公園=5月11日正午ごろ

 近い将来、歩けなくなるのではないか。最近、歩いて10分ほどの駅に向かう途中で、呼吸するのが苦しくなる。歩きたくなくなり、できることならどこかに腰を下ろしたくなる。

 

 これが年を取るということか、と思う。どうも、昨年10月に脳血管手術で8日間入院生活を送った後から、足腰の衰えを自覚するようになったように思う。

 

 朝起きる前のストレッチや週1回1時間程度のトレーニングマシン利用、近場のスーパーやコンビニへの買い物程度では足腰の筋肉は少しも復活しない。

 

 もっと歩かなければと、1~2時間のウオーキングを試みるが、それっきりで次回がない。お金を払って歴史散歩的なイベントに参加するよう心掛けているが、行きたいと思うものは月に1回あればよい方だ。

 

 このように鬱々(うつうつ)たる毎日だったが、数日前にバイクのバッテリーを新しくしてエンジンがかかり、このところ日中は暑いくらいの陽気が珍しくない日々が続くようになったのを理由に、バイクで飛び出し、行った先で歩く時間を稼ぐ決心をした。非日常に活路を求めたと言えようか。

 

 かくて5月11日、小金井公園に向かうことにした。行き先は奥多摩方面も候補になったが、足腰に自信がないうえ、両手の指の恒常的なしびれもあって、まずは家から約7キロ、走行時間30分ほどの近場を選んだ。

 

 とはいえ、バイクにまたがろうとして振り上げた右足がシートに引っかかるは、べた足で小刻みな前進後進すると車重に負けそうになって立ちごけの恐怖が頭をよぎるなど、いきなりヘロヘロ状態に。

 

 ギヤを入れて走り出そうとしても、エンジンの回転数を上げすぎたり、クラッチを滑らかにつなげなかったりと、初心者並みの危うさだった。11カ月間乗らなかったブランクは大きい。

 

 怖かったのは一時停止だ。両手両足でレバーをほぼ同時に操作し、両足を地面に着けて止まらなければならないが、前ブレーキを強くかけてつんのめることが少なくなかった。

 

 途中、二輪用品販売店のピットでタイヤに空気をいれてもらった。危なっかしげな運転を見て取ったか、作業した青年はバイクを安全な場所まで出してくれた。親切な対応に気持ちが明るくなる。

 

 公園には正午ごろ着いた。西口のバイク置き場にはスクーターが1台止まっていた。

ヘルメットと手袋を外し、帽子をかぶって園内に入る。視界は大木の鮮やかな緑で占められた。桜の園をはじめ、武蔵野を代表するコナラやクヌギケヤキが天高く若葉をたたえ、風にそよぐ。

 

 時折、ジョギングの人や犬と散歩する人、サイクリングを楽しむ人らと行き交う。後ろからはよく抜かれる。足が重く、重心も片方にかかり、スタスタと歩けないのだ。右の腰が痛くなり、入園から15分で水を飲み、ベンチに座り込んだ。ちょっと悲しい気分。二つの広場のうち「こどもの広場」側の方が、木陰に簡易テントを張ったりシートを敷いたりして憩う人たちでにぎわっていた。

 

 歩いているうちにリズムが良くなり、入園直後のような疲労感もなくなった。園内での歩数は約6千。世の中で推奨されている数字には満たないが、リハビリの初めとしては上々だろう。

 

 次回はどこに行こうか。2年以内に三陸海岸をツーリングするという夢を実現するために、もう後戻りはしないぞ。