「日本の仏教、『地域のため』考えよう」 櫻井氏講演

 「仏教とウェルビーイング―宗教は私たちの幸せにどう寄与できるか」と題し、北海道大学大学院文学研究院の櫻井義秀教授(63)が8月3日、武蔵野大学武蔵野キャンパス(西東京市新町)で講演した。

 

 武蔵野大学仏教文化研究所主催の連続公開講座「仏教にかける期待―これからの仏教を考える―」(全5回)の一環。櫻井氏は比較宗教社会学などを研究する傍ら、父の死をきっかけに60歳の時、僧侶になったという。

 

 櫻井氏が行った全国調査によると、「現在の自分があるのは先祖のおかげ」と思う人、宗教施設に通う頻度の高い人、「宗教的な心は大切」と思う人ほど幸福感が強い。このことは宗教団体への所属や信仰というよりも、人のつながりを考えたり集まりを持ったりすることの重要さを示しているという。

 

 また、子どものころの幸福感と現在の幸福感は子どもの時の年齢に比例して高くなり、10~11歳の時に楽しかった人が最も幸福感が強かった。宗教はこの時期にかかわりを持つことが大事、と指摘した。

 

 櫻井氏はウェルビーイングには「人生」「地域」「社会」「世界」の4つの領域があるとし、仕事の第一線を退き自分らしく生きる林住期、誰もが集える地域の居場所など、仏教が力を発揮できる例を具体的に挙げたほか、旧統一教会のように「幸せに貢献しない宗教」を正していく宗教活動がなされるべきだと強調した。