8月16日は「非常に強い」台風7号が関東地方に接近していて、東京-名古屋間で東海道新幹線が終日運休するなど大きなニュースになっていた。
東京郊外の武蔵野地方北部は予想暴風圏の外縁部に入っていたが、2カ月前から決まっていた武蔵野赤十字病院(武蔵野市)に行かなければならない。出がけは大雨だった。
脳の血管の手術を受けた患者は、体調の変化の有無を担当医に報告し、1週間前に受けたMRIの検査結果を聞くのだ。新たな疾患が見つからなかったことを喜び、帰りのコミュニティーバスに乗った。
武蔵境駅でバスを降りると、雨はやみ、風もおさまっていた。駅前の歩道を八百屋に向かっていたところ、一瞬「ザワ」と街路樹が鳴り、背中に水を浴びた。
生い茂った葉が雨をたくわえ、一気に身震いしたのだ。ずぶぬれというほどではなかったが、街路樹のはずれを歩くべきだったと自分の不明を恥じながら、行き着いた店は休みだった。定休日なのかお盆休みなのか、いずれにしても店側を責める理由はない。
運の悪いことは続くものだと、少々くじけて駅に戻り、西武バスで家路に就いた。
しかし、待てよ。記録にとどめるほどの出来事だったのだろうか。いや、「老後」とは、こんなものかもしれない。