画題の「ばあちゃん」、今度の舞台は居酒屋

昭和のリアル⁉ 「ばあちゃんがいた居酒屋」(120号)

絵画部の展示会場。右下に「ばあちゃん―」の作品

 趣味の絵画の腕を上げている知人が出品する国展の招待状を送ってくれた。会期が閉じる前日の5月11日、妻と一緒に東京・六本木の国立新美術館に出向いた。

 

 国展は国画会が主催する、日本最大級の公募展。絵画、版画、彫刻、工芸、写真の5部門があり、絵画部門は約600点が展示されているという。

 

 受付にあった出品者リストで彼の作品を展示する区画を確かめ、入り口付近の大作鑑賞はそこそこに歩を進めた。

 

 彼の絵は3年間見てきた。画題は一貫して子ども時代の生活の1シーンで、中心にはいつも「ばあちゃん」がいる。今回の招待状にも「『ばあちゃんがいた居酒屋』を出展している」と添え書きしていた。

 

 だが、待てよ。昨年の作品は「おばあちゃんの葬式」と題し、おばあちゃんは棺(ひつぎ)に納まっていた。その前ではごちそうを囲む通夜の風景が描かれていたではないか。おばあちゃんが亡くなり、次は何を主題にするのだろうと、いらぬ心配をしたものだ。

 

 それが、居酒屋という空間でよみがえった。割烹着姿で一升瓶から酒をつぐ顔は楽しそうだ。店の手伝いでなく、切り盛りしているのかな。

 

 画面には相変わらず大勢の人が描かれている。おばあちゃん以外に客13人、従業員2人、流しのギター弾き1人。客は2人1組が多いが、性別、年代、2人の関係性はみな違う。

 

 飲んでいる酒も肴(さかな)も別々で、酒瓶はブランド名が読み取れるほど丁寧に描かれ、伝票は値段までわかる。壁のお品書きの値段を見ると、昭和40年代頃の風景だろうか。ノスタルジックな気分に誘われる。

 

 会場の出品者リストで彼の名前は「会友」の中にあった。一般出品者から格上げされたようだが、。私には絵のどこがどう変わったのかわからない。ただ、妻が漏らした「ほかの絵よりもリアリティーがある」「どこかで見たことがある顔ばかりなのも親しみが持てる」との感想に異論を挟む余地はない。