唐茄子屋政談など3席堪能 さん喬独演会

「満員御礼」の札が貼られた柳家さん喬独演会の会場出入り口

 柳家さん喬独演会が6月28日、三鷹市芸術文化センターであった。

 

 前座の柳家小きちの落語の次に『片棒』を、9月に真打ち昇進が予定されている二ツ目柳家やなぎの『猫の災難』に続いて『子別れ』と前半に2席を演じた。

 

 中入り後はストレート松浦がお手玉や皿を使ったジャグリングのあと、『唐茄子屋(とうなすや)政談』を語った。

 

 一人ごちるように小さな声で語り、聞き耳を立たせるかと思えば、張りのある声が一気にまどろみを破る。円熟の語りに引き込まれたのは3席目の唐茄子屋政談だ。

 

 勘当された若旦那が主人公の人情噺(ばなし)は笑いのクッションが少ない分、ついうとうとしてしまったが、「おじさん」の助けが入るところで覚醒し、血も涙もない大家に怒りがこみ上げた。

 

 この噺で着座したさん喬は開口一番、「もうとっくに終わっている時間なのに…。マクラはほどほどにして」と番組進行の遅れを笑いに変えて本編を40分間演じた。

 

 さん喬のサービス精神は前半の子別れでも発揮され、マクラを含めて1時間を費やした。大団円の、子を挟み父と母の3人の再会シーンでは、筋書きがわかっているのに目頭が熱くなった。

 

 落語は本編も楽しみだが、マクラも笑えたり、勉強になったりで聞き逃せない。この日は「ヤバい」という言葉がいろいろな場面で使われ、政治家にまで及んでいることに驚くとしたうえで、「矢場」に語源があると解説。

 

 また寄席の世界には「さんぼう」といって、噺のネタにしても怒られない「ぼう」が3つあるという。今では差別用語の「つんぼう(つんぼ)」と「けちん坊」「泥棒」がそれ。けちん坊は「六日(むいか)知らず」ともいわれるが、その解説はなく、本編の「片棒」に入った。

 

 「六日知らず」はこの稿を書くために調べたところ、ついたち、ふつかと指を折っていくと六日からは指を開くことになり、握ったものを手放すのはイヤ、ということを意味しているとわかった。