栄光のマラソンランナー 70代の挑戦

 1956年のドイツ・メルボルン五輪の男子マラソンで金メダルをとった人が老い、病気の妻と老人ホームに入ったが、男はホームの退屈な生活に嫌気がさし、介護士や入居者たちと衝突。過去の栄光の写真にも後押しされ、70代でフルマラソンに挑戦する。

 

 9月27日、三鷹市芸術文化センターで観(みた)た映画のタイトルは『陽だまりハウスでマラソンを』。生きがいを持って老後を生きる人を主人公にした映画ばかりを集めて上映するシリーズの3作目だ。

 

 マラソンは自分と縁がないし、主人公がオリンピックで優勝した超人ならば同じ種目で再挑戦という設定は意外性に乏しい。2時間の上映も長い。

 

 そう考えて上映までは気乗りしなかったのだが、夫(主人公)の決意を突き放していた妻がやがてストップウオッチを手に夫のトレーニングを応援する夫婦愛、冷淡な入居者たちが主人公の情熱に打たれて応援に回ったりと、お定まりの明るい光を要所に差し込ませ、安心して観ていられる。

 

 回想シーンが少なく、時を追うかたちの展開なのも、物語をわかりやすくしている。

 

 圧巻は4万人が参加したベルリン・マラソン。スタート直後の上空からの映像は東京マラソンを上回る迫力で、主人公の顔も地上の望遠カメラで一瞬とらえられる。

 

 映画は、高齢男性がマラソンによって「うつ」を克服したという新聞記事をヒントに、監督が10年以上構想を温めていたというだけあって、老人ホームの食事や歌唱、工作などの集団活動、療法士などの介護体制もしっかり盛り込まれており、こちらは自分の「ついのすみか」を考えるときのヒントになりそう。

 

 2013年、ドイツ製作。日本では15年3月から公開された。