新聞記者が語る「『いのち』に寄り添う」とは 武蔵野大・仏教講座

イメージ 1 武蔵野大学仏教文化研究所の公開講座「仏教の未来―新しい挑戦に向かって」の3回目は朝日新聞記者の磯村健太郎さんを講師に招き、7月7日、同大で開かれた。今回のテーマは「『いのち』に寄り添う現場から」。約100人が聞き入った。
 磯村さんは、独り暮らしの高齢者が480万人にのぼり、210万人とされる生活保護の受給者も氷山の一角にすぎないと指摘。全国の寺の数がコンビニよりもはるかに多いことと併せて、僧侶は自分たちに力があることに気付いていないのではないかと疑問を投げかけ、寺に地域での存在感を持ってほしいと注文をつけた。
 本題の「寄り添う」では、僧侶が実践している二つの事例を紹介した。「あなたのお話お聴きします」の張り紙を出したところ、相談者が続出し今は予約制になっている東京都内の寺の僧侶は、「相手の気持ちをくもうとする努力にこそ寄り添いを感じてくれるのでは」と磯村さんに語り、その言葉に寄り添いの基本の姿を見たという。若い僧侶でつくるNPO法人京都自死・自殺相談センターの人からは電話で話すときの心構えを「自分の横にいて、そっと相手の肩に手を置く感じ」と聞き、うなずいたという。
 これからの仏教、あるいは僧侶ができる具体的なことは何かについても各地の事例を紹介した。毎週日曜日にデイケアを行い、檀家の人たちが手伝いに来る寺(佐賀)、寺に寄付されたコメ(仏供米<ぶっくまい>)を集めて東日本大震災の被災地に送る浄土宗青年会の「米一升運動」(滋賀)、食費を浮かせて文具などの購入に回してもらうため野菜や果物、缶詰などのお供えを児童養護施設に贈っている寺(東京)――。これらのことから「自分は何ができるかを考え、それを一つ一つ積み上げていけばよいのではないか」と参加者に提案。仏教の未来についても「寺や僧侶の心のあり方にかかっている」と言い切った。
(写真下は宮沢賢治雨ニモ負ケズ」の自筆メモの複写を示し、「行ッテ」の字句が寄り添いの本質に通じると話す磯村さん)
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