「子どもの貧困」深刻 広がる学習サポート

イメージ 1 市民活動団体の代表者に今取り組んでいる課題などをサロン形式で語ってもらう「ゆめサロン」(西東京市市民協働推進センター主催、会場・同センター)は9月14日、「子どもを貧困と格差から守るために」をテーマに開かれ、23人が参加した。
 講師の岸田久恵さん=南町3=は新宿区立の小学校教員(現在は東京都教職員組合専従)。昨年2月、夫ら家族4人で、塾や家庭教師の支援を受けられない中学3年生を対象とする無料塾「学び塾『猫の足あと』」を自宅で始めた。
 岸田さんは、子どもが貧困状態にあることが見えるようになってきたという。国連児童基金ユニセフ)の調査、厚生労働省の調査とも貧困率は15%前後となっており、6~7人に1人の割合だ(2009年)。ユニセフの調査では先進35カ国の悪い方から9番目。厚労省調査では、ひとり親世帯の子どもの2人に1人は貧困状態にある。貧困率とは全国民の年間の可処分所得を少ない方から並べ、中央の金額の半分に満たない人の割合をいい、09年の場合は112万円未満。
 貧困は学校で見える。お金のかからない部活を選ぶ、修学旅行に行きたがらない、同じ体操着を兄弟で着まわす、給食のない夏休みにやせる、けがの手当てを家でできず保健室に駆け込む、集金袋を忘れたと言い訳をするなど様々なケースが近年のアンケートでわかってきた。一方で不登校や引きこもり、高校中退、養護施設からの退所など学校からも見えない、隠れた貧困がある。
 困窮する保護者に市町村が援助する就学援助制度はどうなっているのか。生活保護の受給者(要保護者)とそれに準じる準要保護者への就学援助費の受給率は、東京都の場合、1割未満から4割以上までと市区町村間に格差があり、学校間格差も大きい。地域全体が貧困で働く意欲のない親を見て育つ子どもは学習する意味を見いだせず、未来に希望を持てなくなる心配がある。財源のない自治体で支給の基準が低い傾向が見られ、受給に必要な情報量や広報の方法、さらには制度の内容にも自治体によってばらつきがあると、岸田さんは指摘した。
 西東京市の場合、就学援助費の支給対象を「収入額が生活保護基準の1.5倍」としており、都平均の約1.2倍を上回っているものの、申請手続きは平日の日中に教育委員会に出向いて行わなければならず、「働いている親に不親切ではないか」と話した。
 お金がなければ学んだり進学できなかったり、学歴によって生活レベルが決まるという「貧困の再生産」を立ちきるための活動は、古くは4半世紀前から生活保護家庭の中学生の勉強会の形で、福祉行政の取り組みから始まった。現在は西東京市にあるNPO法人稲門寺子屋が無料の学習支援を行っているほか、弁護士、区議、NPO法人、若いOLなど様々な人たちが都内各地で学習支援活動を展開しているという。
 岸田さんは「いったんは挫折した生徒が奮起し、私たちの勧める高校に合格。お礼にと小遣いで買った高級チョコレートをもらったときは感激しました」と、今の活動がもたらしてくれるものの一端を披歴した。