
東日本大震災による福島第一原発の事故以来、「脱原発」「卒原発」の論議が盛んになっている。石館さんは二十数年前、商社の責任者として日本初の風力発電の事業化と取り組み、エネルギー問題をめぐって電力会社と闘った経歴を述べ、政治家や学者と立場が違うことを鮮明にした。

そのうえで、日本が原子力発電をやめても風上の中国、台湾、韓国に計75基が稼働していること、日本の電力料金は現在でも世界一高いこと、日本の二酸化炭素排出量は産業部門よりも民生部門と運輸部門で増えていることなどを各種調査データで裏付けながら紹介した。
また新エネルギーについては、固定価格買い取り制度の後押しを受けて増加が見込まれる太陽光発電は発電効率が低く、風力発電は環境アセスメントに時間がかかるほか、いずれも日照や風という自然条件に左右される不安定な電源であり、適地の制約もあると指摘。バイオマス発電も設備認定に時間がかかり、現状では木くずなど原料の大量集荷が難しいという。
そうした中でエネルギーの安定供給と安全をどう両立させるか、脱原発による電力不足を再生可能エネルギーでカバーできるのか、化石燃料による発電の増加で地球環境保全は後戻りするのではないかなど課題は多い。石館さんは、地球環境を悪化させないためにも、日本は世界の最先端を行く再生可能エネルギーの開発で重要な役割を果たしていかなければならないと強く訴えた。このほか、電力自由化によるさらなる競争原理の導入や発電と送電の分離、バイオマス発電など地産地消のエネルギー政策の強化、東西で異なる周波数の統一、省エネのさらなる推進などを今後の電力政策に求め、「自前でできるものはカネをかけてもやっていかねばならない」と話した。