JR吉祥寺駅前に集合、井の頭公園を抜けて寺町通りへ。関東大震災の後、浅草や麻布、築地あたりで被災した寺院が寺町通りを中心に移ってきたという。目黒川の源流とされ湧水が絶えることのない高源院の鴨池(かもいけ)。夏にスイレンが花を咲かせ、晩秋はシベリアからカモ類が飛来するという。江戸中期の浮世絵師、喜多川歌麿の墓がある専光寺などにも立ち寄った。
烏山つつじ緑地約1千平方メートルは区が管理し、隣接する西沢つつじ園と合わせると約5千平方メートルに約90種類、約1万5千株のツツジが植えられている。白い花は早く咲いたようだが、全体としては見ごろを持ちこたえていてくれた。
烏山通りに出て甲州街道に向かうと下山家の屋敷林が保存されていた。農家の畑と家屋を風害から守ってきたケヤキなどの木々は、今、緑のオアシスに。目の前にそびえるタワーマンションとの時差は300年を超えるという。病気に強く、普通のハクサイの2,3倍も大きい「下山白菜」は昭和の初め、ここで生まれた。この東京野菜はいったん姿を消したが、奇跡的に復活の途上にあるそうだ。
都立祖師谷公園のフジ棚の下で昼食を取り、猪股庭園へ。庭園を歩く時間はなく、住宅内部のみボランティアガイドの人に案内してもらった。どの部屋も住む人の使い勝手の良さが最優先に考えられていて、それが設計者の科学の知見と独自の美学でくるまれたものであることに何度も感心させられた。築後、半世紀近くを経た今も、建築を志す学生たちの研究対象になっているという説明が納得できた。一緒に見学した女性からは「猪股さんのように女中が3人いなければ住めないわ」と別の面から現実的な感想が聞こえた。(下の写真は左から、高層マンションの下に広がる屋敷林、雨戸・網戸・障子・ガラス戸と4枚の引き戸を備える猪股邸)