冴える曲技 シルク・ドゥ・ソレイユ

超人的な演技と高い芸術性で観客を楽しませた公演のフィナーレ

世界的サーカス集団シルク・ドゥ・ソレイユの東京公演会場

 日本か米国か。野球の世界一が決まる3月22日は、世界的なサーカス集団「シルク・ドゥ・ソレイユ」東京公演(2月8日~6月4日)を観覧する日でもあった。

 

 サーカスは午前11時30分開演。野球が二回、今永がソロ本塁打を浴び、米国に先制されたところで家を出なければならなかった。

 

 観覧は昨年、東京都内に住む娘に声をかけられ、私たち夫婦と娘夫婦が一緒に行くことで日にちを決めた。観覧前日は開催地最寄りの東京テレポート駅での待ち合わせを詰めた。

 

 初めて降り立った東京テレポート駅から会場のお台場ビッグトップへ至る風景は、まるで未来都市。一面コンクリートで固められた広場の遠くに、超高層ビルの上部がいくつものぞいていた。

 

 人の群れの流れにしたがって歩みを進めると、若い樹木や足下に花盛りのチューリップを配した庭園の趣が現れる。

 

 開場は予定の10時30分がやや遅れたが、開演は定刻通り。30分の休憩を含め約2時間10分の公演だった。

 

 公演のタイトル「アレグリア」はスペイン語で「喜び」や「歓喜」の意味という。王を失った国が保守層と若い世代の争いの末、若者たちが自分の国に光と調和をもたらすというストーリーが、超絶技巧のアクロバットとコミカルな寸劇、生の歌などで表現される。

 

 回転やひねりを加えて飛び移る、スケールの大きい空中ブランコ。両端に火をつけたファイアナイフを自在に操りながらのダンス。全身を使ってたくさんのフープを回転させ体を隠してしまうフラフープーー。息を殺して見入ってしまう。

 

 超人的な演技といえば内村航平さんの鉄棒を思い出すが、見ていてハラハラする気持ちを抑えられなかった。シルク・ドゥ・ソレイユの演技は不思議と緊張感を誘わない。演者自身が楽しんでいるようにさえ見える。これが「プロの力」なのか。空中ブランコなど相手のある集団演技はなおさら難しいはずなのに…。

 

 休憩中に、娘が仕入れてきたワールド・ベースボール・クラシックWBC)で日本代表勝利の情報を聞いた。帰宅後、テレビのチャンネルを何度も替え、野球ドラマのダイジェストと歓喜の風景を楽しんだ。