真夏の落語勉強会はつらかった

柳家喬太郎みたか勉強会の会場出入り口に貼り出された満員御礼のポスター

 落語家・柳家喬太郎の「みたか勉強会」(昼夜2部制)が8月1日、三鷹市芸術文化センターであった。

 

 勉強会とは師匠いわく「不得意な噺(はなし)とか、これをしゃべりたい」というものであったり、客の側からすれば「大ネタや、めったにやらない新作落語とかを聴けるんじゃないかという期待」があったりする。

 

 が、「今日のコンセプトはフツーの古典落語をフツーにしゃべる」(昼の部)とマクラで笑わせた。

 

 で、出し物は1席目が『へっつい幽霊』、2席目が『お若伊之助』。

 

 どちらも初めて聴く噺だったが、猛暑の中を歩いた疲れが出たか、言葉が聞き取りにくく集中力は続かなかった。サゲのころにやっと覚醒するという体たらく。

 

 確信が持てなかった「へっつい」の意味や各演目のあらすじは帰宅後、インターネットで調べ、なんとか納得した。それでも、言いようのないむなしさが残る。

 

 番組は前半で三遊亭東村山という二ツ目が『転失気(てんしき)』、後半は瀧川鯉橋が『大工調べ』を演じた。

 

 東村山は地理的な親近感を覚え、師匠(三遊亭白鳥)が弟子に出身地の名前を付けると聞いて得心。噺はうまく将来が楽しみだ。

 

 鯉橋は喬太郎より12年遅れて真打ちに昇進、所属も落語協会ではなく落語芸術協会という。「頼まれて出演した」と明かしたが、それだけ喬太郎が高く評価しているということか。知らぬ間に懐に飛び込まれている感じの芸風は好ましく、まだまだ枯れてほしくない。

理不尽な死を強いる原爆症 映画「黒い雨」

 生誕100年を記念する今村昌平監督作品特集の2本目『黒い雨』の上映会が7月25日、三鷹市芸術文化センターであった。定員250人の会場は午前・午後の部ともチケット完売という。

 

 1989年公開、モノクロで123分。原作は井伏鱒二。私が知っている役者は田中好子、北村和夫、市原悦子、沢たまき、大滝秀治、殿山泰司、小沢昭一、三木のり平、石丸謙二郎といったところだ。圧倒的に故人が多い。

 

 広島に投下された原子爆弾の威力、例えば路面電車を襲う爆風で吹き飛ぶ満員の乗客、黒焦げとなり街のあちこちに転がる死体、大やけどを負って街をさまよう人々と、目をそむけたくなる惨状が記録映画のように再現される。

 

 映画のタイトル「黒い雨」は、長々と描写されない。舟の上とか主役の矢須子(田中)顔などカット数も少ない。

 

 それでいて、放射能を含んだ雨は5年後、ついに矢須子の命を奪う。もう一人の主役である矢須子の叔父(北村)は、それまでに、二次被ばくしていた友人2人を次々と失い、愛する妻にも先立たれた。悲しすぎる死の連鎖…。

 

 制作陣は黒い雨を視覚的に強く印象付けないで物語を展開する方が、原爆の恐ろしさや非人間性をより効果的に訴えられると考えたのだろう。実際、チラッとしか見ていない黒いシミは観客の心の奥底にもへばりついていて、そのくせいつでも浮かび上がってくるのだ。

 

 この作品には、特攻帰りの若者が車のエンジン音を聞いて正気を失い、死をかけて戦場で敵と戦う幻想に襲われる場面が何回もある。日本軍側の特攻を組み込むことで戦争を広く考えさせようという意図だろう。矢須子との恋愛も絡んでいて異物感なく観(み)ることはできる。

 

 今村監督はどこで「性」を扱ったか。あえて探し出せば矢須子の2回の入浴シーンと矢須子を一方的に慕う青年に身体接触を迫られるシーン、それと村の女性たちの川での集団沐浴(もくよく)だろうか。

 

 だが、場面転換は早く、想像を色気にまでふくらませた観客は皆無だろう。むしろ入浴する矢須子の髪がごそっと抜ける様子は彼女の不幸を強く予感させ、ぞくっとした。

 

 日本がじわりじわりと「戦争ができる国」に近づき、核の暴発が起きる可能性が高まっていると思えてならない今、原作本も読んでみたい。映画の記憶が鮮明なうちに。

花ハス観賞にぎわう 旧東大農場

お気に入りのハスの花にカメラを向ける来場者

東大産のモモは安価も手伝って快調な売れ行き

 西東京市の旧東大農場で7月17日、国内屈指の品種の多さを誇るハス見本園が一般公開され、花を観賞する人たちでにぎわった。

 

 ハス見本園には国内の在来種をはじめ、中国や米国など海外の品種、交配によって生まれた品種など300種以上が栽培されている。このうち百数十種がコンクリート製の水槽で栽培・展示されている。

 

 2千年以上地中にあったと推定される種子の発芽に成功し、古代ハスとして有名になった「大賀ハス」と、現在の東大大学院附属生態調和農学機構が中国産と米国産を交配して作り、品種登録された「月のほほえみ」「緑地美人」は大学側の推し品種だ。

 

 一般公開は、大学のキャンパス整備工事と続くコロナ禍で中断したが、昨年から一般公開(午前9時~正午)、翌日の観蓮会(かんれんかい、午前7時~11時)の2日間公開となった。昨年は3千人を超える人が訪れたという。

 

 この日は朝から蒸し暑く、天気予報も「曇り一時雨」で突然の雷雨に注意するよう促していたが、不安定な天候もなんの開門までに約100人が並んだ。

 

 運営ボランティアの話では「昨年の開催日よりも花やつぼみをつけているハスが多い」という。花は桃色や白、黄と色とりどり、花弁も一重あり八重など変化に富む花を楽しみながら、カメラを向ける人が多かった。

 

 見本園の手前では研究用の果樹園で収穫された桃の即売があり、2個セットで500円、600円、1千円の3種類。売り場は担当者が「ハスを見に行ってください」と何度も叫ぶほどの人だかりとなった。

コメディーにあらず人情劇 映画「免許返納⁉」

 7月9日、コメディーを楽しむつもりで映画『免許返納⁉』を観に行った。

 

 私自身、運転免許の自主返納を本気で考えている。ネットで予告編を観ると、主人公の舘ひろしが大型バイクのハーレーに乗っている。その舘は役柄では70歳の俳優だが、実年齢は76歳で私より2歳しか若くない。シニアのバイク乗り同士、共通する何かがあるはずだと思った。

 

 30年以上前のコメディー映画『免許がない!』。免許取得に悪戦苦闘する舘におおいに共感しながらも面白かった印象が残る。その続編なら笑いどころも多かろうと想像した。このように、動機はてんこ盛り。

 

 映画館は西武池袋線で2駅目の大泉学園駅からバスで3分ほどのT・ジョイ大泉。午後零時台の上映に観客は約20人。高齢夫婦が4組いて、免許返納を考えている人たちかなと想像してしまう。女性客が男性のほぼ2倍もいたのは意外。舘ひろしのファンなのだろうか。

 

 さて、映画を観ての感想だが、まずは私の免許返納の気持ちを少しも後押ししてくれるものではなかった。認知症を疑われたり、ブレーキとアクセルを踏み間違えたりと、世にいう高齢者の不適格運転と本作はまったく結び付かない。

 

 当然と言えば当然だ。舘が演じる南条はもともと免許返納する気がなかった。親友の俳優(宇崎竜童演じる尾崎)がバイク事故で瀕死の状態に陥ったことへのコメントが世間に誤解され、「南条が返納する」という世論がつくられたのだから。タイトルを自分に引き寄せて解釈してはいけない。

 

 コメディーという前宣伝にもだまされた。大笑いするシーンはほとんどなく、時々くすっと笑わされる程度。物語は南条と尾崎の固い友情が骨格となり、そこにさまざまな人間模様が絡んでくる、なかなか手の込んだ人間ドラマになっていて、むしろじんわりと泣かせる。

 

 配役がよかった。プロダクション社長の吉田鋼太郎やデコトラの八嶋智人、かつての自動車学校教官の西岡徳馬ははまり役。大地真央や真矢みき、南野陽子はいくつになっても美しい。中山忍は遺影になっていた。反社会的勢力の内藤剛志はテレビで見たことのないすごみをあふれさせていて驚かされた。

掘り起こしたい未指定の文化財 小野教授講演

 武蔵野大学仏教文化研究所の連続公開講座の2回目が7月4日、同大学武蔵野キャンパス(西東京市)で開かれ、愛知学院大学文学部教授の小野佳代さんが「日本の宝・仏像を未来へ―地域の文化財調査から―」と題して話した。

 

 小野さんは今回の考察にあたり、「過去から現在へ」と「現在から未来へ」と時系列で二分。「過去から現在へ」では国宝に指定された仏像の多くが奈良・興福寺にあることについて、阿修羅など八部衆像のように体格が小柄で像の中が空洞という構造(脱活乾漆造)なので、幾度の火災の際でも運び出せたと説明した。

 

 「現在から未来へ」では、愛知県春日井市の2つの寺で未指定の仏像各1体を調査し、県の文化財指定を受けるに至った事例を紹介した。

 

 例えば、退休寺の阿弥陀如来坐像(ざぞう)は肩の線や手の形から平安仏とわかり、さらに像内の墨書から制作された場所や年月日、発願者も突き止めた。この調査以前に編纂(へんさん)された県史では寺さえも調べられていなかったという。

 

 文化財の指定を受けていなくても「ご開帳は50年に1度」の秘仏が市の指定を受けて公開されることになり、小野さんがSNSで発信したところ全国から参拝者が訪れた。寺も檀家も喜び、子どもは郷土に誇りを感じたよう。「新しい文化創出に一歩踏み出した」と小野さん。本堂の新築や文化祭の毎年開催につながった寺もあるという。

 

 愛知・岐阜両県の文化財保護審議会委員も務める小野さんは「地域の歴史を語る資料であれば、できる限り指定したい」としながらも、移動や売却ができないなど指定に伴う制約から指定を迷う住職もいるため「待つ時間も必要です」。

 

 現在の課題として「未指定文化財の調査に地域の人をどう巻き込むか。とくに若い人に興味を持ってほしい」と述べた。

人情ばなしで泣かせる桂宮治

満員御礼の札が出たが、1つの空席を宮治にいじられ会場は爆笑の渦

 落語家・桂宮治の独演会が7月5日、三鷹市芸術文化センターであった。

 

 会場入り口で番組表をもらうと、前半は開口一番(前座)と桂宮治、中入り後は宮治の名前だけだった。これは長編2話をじっくり聞かれるかもしれない。どんな噺(はなし)だろうとワクワクした。

 

 幕が上がると、アロハシャツにあちこち穴の開いたジーンズ姿の宮治が軽やかにステップを踏みながら「でヘっ」と言って出てきた。

 

 あ、オープニングトークからだ。「もっちゅりん」を知っているかを客席に挙手で問い、「知らないが7割」を踏まえてミスタードーナツが開発した新食感ドーナツであることを紹介。このネタで客席をいじりまくり、爆笑を誘った。

 

 トークの締めは自身が大のお気に入りというゴマとワサビを組み合わせた調味ごまのプレゼント。欲しい人に挙手させ、じゃんけんで最後に残った2人に、客席に降りて手渡した。「こんなところで運を使っちゃいけない」にまたドッと笑い声。

 

 三鷹の落語会も演目は終演後に発表されるが、この日は前座が『寄合酒(よりあいざけ)』を演じたことを受ける形で「酒特集」を予告。前半で『試し酒』、中入り後は『子別れ』となった。

 

 爆笑を呼ぶ語り口が宮治の持ち味だが、「試し酒」では大酒飲みの奉公人が5升の酒を1升ずつ飲み干すしぐさが秀逸。

 

 「子別れ」では、酒を断って更生した棟梁(とうりょう)と別れた妻子との再会シーンに3人が実像のように浮かび、そのやりとりに演者自身も感涙にむせんでいると思わせた。親子の情、夫婦の情に少なからず覚えのある人ならば、もらい泣きしても不思議ではない。

 

 宮治の人情噺、恐るべし。

詐欺電話、撃退できるかな

わが高齢者世帯でも取り付けた無償給付の自動通話録音機

 西東京市のホームページで、市が「自動通話録音機」の申請受け付けを始めたことを知り、6月25日、田無庁舎へ出向いた。

 

 2階玄関を入ると、左手に特設コーナーがあり、担当者のような人が3人いた。テーブルの内側にいた男性が市職員で、他の男女は田無署からの応援要員だった。

 

 書類1枚に住所、氏名、電話番号、生年月日などを記入すると、録音機本体、本体と電話機をつなぐケーブル、コンセントに差し込むACアダプターの使い方を説明してくれた。

 

 工事も工具も必要なく、抜いたりさしたりすればよい。わが家の場合、アダプターのコードが壁際のコンセントまで届くかと、でコンセント周りがタコ足然としてしまうことだった。

 

 電源はテレビのコンセントを入れ替えて解決。妻に携帯電話から家電にかけてもらうと、妻の携帯のスピーカーから「この電話は、振り込め詐欺などの犯罪被害防止のため、会話内容が自動録音されます」との警告メッセージが聞こえ、作業は成功。

 

 市によると、昨年1年間に市内で発生したオレオレ詐欺などの特殊詐欺被害は54件、被害額は約8億7千万円に上る。特殊詐欺の予兆電話も連日のようにかかってきているという。

 

 実際、妻の携帯には相手不明の着信が何件もあり、固定電話にも不審な電話があったという。通話録音機を取り付けた友人の話を聞いて、わが家にもと提案したのは妻だった。

 

 市の話では2022年から毎年、65歳以上の人が居住する世帯に自動通話録音機の無料給付を始めており、今年も6月22日から250台を限度に配布する。

 

 初日は順番待ちの列ができたというが、この日は先客がなく、私で「おおむね70台」ということだった。