佐藤可士和さんが語るクリエイティブな仕事の一端

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佐藤可士和さん=朝日新聞ライブ配信画面から

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オンラインイベント「佐藤可士和×元担当編集者 クリエーター夜話」の配信画面

 ユニクロ楽天、T-POINTのロゴをつくったのが同じ人物、佐藤可士和(かしわ)さんということを最近になって知った。この人の個展が東京・六本木の国立新美術館で開かれていることを報じる新聞記事を何度か目にしたからだ。そんなところに、個展の主催者の一員である新聞社から、彼のトークイベントをオンライン配信し、無料で視聴できるとの案内メールをもらい、少しばかり深入りすることにした。

 

 出演は佐藤さんと、佐藤さんの著書を担当した日本経済新聞出版社の元編集者、佐藤さんの連載コラムを担当した朝日新聞の元編集者の3人。4月12日午後8時から約1時間20分、ライブ配信された。

 

 佐藤さんの肩書はクリエイティブディレクター。デザインや広告の世界にいるか展覧会を見ていないと理解できないというやりとりはほとんどない。「展覧会を見て『私にも描けそう』と言ってもらえるのは、僕にとって褒め言葉。瞬時に理解できたということですから」と佐藤さんは話した。

 

 だが、思いつきだけでポンと生まれる作品はない。例えば、ロゴにも設計図がある。アイデアの最初は感覚的なものだが、途中から数値を使い、きれいな比率になるようにする。大小で違いがあってはならない。色は形よりも感覚的だが、濁りのない強い色にする。明快な色は再現性が高く、プログラムで運用できる。「微妙なところで勝負しない」と潔い言葉を聞くと、コロナ禍でリモートワークを進め、今やオフィスからパソコンさえもなくしたことも納得できる。

柳亭市馬を聴く 三鷹で独演会

 柳亭市馬の落語を初めて聴きに行った。4月3日午後、三鷹市芸術文化センターで開かれた独演会。新型コロナ対策で前後左右の座席を空けて「満席」だった。

 

 「落語は初めてという方にもお勧めしたい、柔らかな語り口」という財団のチラシに誘われ、2月も終わろうとする日のチケット発売から10分後にインターネットでゲットできた。

 

 番組は前座の柳亭市松、二ツ目の柳亭市弥と一門の弟子に続いて市馬師匠が「花見の仇討(あだうち)」を演じた。仲入り後の演目は「茶の湯」。

 

 市馬の第一印象は、その美声だ。ツヤがあって通りがよい。温和な表情が一転、まずい茶を飲むときの顔芸には身を乗り出して見入った。それでいて、語りにもしぐさにも品がある。正統派の落語家と言われるゆえんか。

 

 弟子をネタに笑いを取ろうとしないところに、落語協会会長に推される人望も感じられた。3月には芸術選奨の大衆芸能部門で文部科学大臣賞を受けた。

 

 出し物はいずれも古典落語の名作とされ、長屋の住人が巻き起こす、あるいは巻き込まれることも共通している。名人級の落語家はその日の客席を見て演目を決めるというが、はたしてどうだったのか。

 

 この日の悔いは、花見の仇討のオチに出てくる「六部」の意味がわからず、客席の笑いに参加できなかったことだ。

戦国時代の城跡から新時代の巨大建築物へ 所沢東部を歩く

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江戸後期の大庄屋の居宅で重要文化財の「黄林閣」

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巨石を想像させる「角川武蔵野ミュージアム

 市民団体・北多摩自然環境連絡会の観察活動「ウオッチング」が3月25日、埼玉県所沢市の東部地域で行われた。

 

 新型コロナウイルスの感染防止のため、本年度は人が密にならないことを見込んだ狭山丘陵散策シリーズが企画され、4回目のこの日が最終。

 

 緊急事態宣言が解除されて間もないせいか、参加は6人と少なめ。コースはJR武蔵野線東所沢駅を発着点として、所沢市が作ったパンフレット「ウォーキングナビ 東エリア」のモデルコースを短縮した約10キロ。

 

 東所沢駅から20分ほど歩いた坂の下に白く大きな観音像の背が現れた。真言宗東福寺だ。境内の高台からは柳瀬川に沿う桜並木が細い帯のように見えた。手前にかけては河岸段丘を示す地形、川の向こうは清瀬市ということだった。

 

 畑の道路側に野生化したムスカリの小群落を見つけたり、滝の城址公園の入り口付近でいつ来るかしれない花見客を待つ三つの露店に同情したりしてから、園内で早めの昼食をとった。

 

 午後の部は正午出発。つづら折りの階段を上り城山神社に着く。社殿前の広場が「滝の城」の本丸跡で、眼下に公園の野球場、その向こうに武蔵野線の高架など眺望が楽しめる。

 

 滝の城址は、戦国時代の城郭跡で、後北条氏支配下にあったが、豊臣秀吉の小田原攻めによって落城したという。神社の裏に回ると「四脚門跡」の説明板があり、足下に見える空堀に引橋を架けてあったとみられる。三の丸跡を経て、昔は外郭だったとされる住宅地に出た。

 

 県道179号に出て関越道を下に見て進むと国道463号(浦和所沢バイパス)にぶつかる。バイパスを渡ると右手に広場と長屋門が見えた。一部が国の重要文化財になっている「柳瀬荘」へは、この広場から狭い坂道を上っていく。

 

 この日の一行もまち歩きの達人ぞろいだが、柳瀬荘は知らないようだった。一般公開されるのは週に1回だけ。それが今日、木曜日だ。

 

 坂が終わると、かやぶき屋根の立派な古民家が現れた。重文の「黄林閣」。江戸後期に大庄屋の住居として東京都東久留米市柳窪に建てられたと聞いていたから、北多摩の住民として親近感を覚える。主屋の西に書院造りの「斜月亭」と茶室の「久木(きゅうぼく)庵」が連なる。

 

 柳瀬荘は、明治から太平洋戦争の戦後復興まで電力事業に情熱を注いだ実業家、松永安左エ門の別荘で、戦後まもなく東京国立博物館へ寄贈された。黄林閣の土間では、管理人が施設の維持管理が難しい実情や松永を巡るエピソードを披露。みんな真剣に聞き入り、次々と質問した。管理人の話では、ボランティアの人たちが整備を進める山林の遊歩道が年内に開通できそうという。

 

 柳瀬荘では想定外のほぼ1時間を費やしたため、東所沢駅方面へバスを利用する話が出たが、近くの停留所からは1時間待ちの可能性が高いことがわかり、当初の予定通り徒歩で「ところざわサクラタウン」へ向かった。

 

 サクラタウンは東所沢駅から北へ徒歩10分、所沢浄化センター跡に昨年誕生した大型文化複合施設。出版大手のKADOKAWA(東京)が建設、運営する。6階建てのビルにイベントホール、商店街、食堂、ホテルなどをそろえた。別棟で、図書館と博物館、美術館を融合した「角川武蔵野ミュージアム」、祈りの場の神社もある。

 

 このうち中核を担う角川武蔵野ミュージアムは建築家の隈研吾さんが設計し、内部には高さ約8メートル、360度本棚に囲まれた「本棚劇場」など見どころが多いようだ。しかし、建物そのものだけでも見ごたえは十分。高さ30メートルを超え、地を割って出た巨石をイメージさせる外観は花崗岩(かこうがん)の板材2万枚で覆われているという。

 

 角川武蔵野ミュージアムは外観を見るだけ、複合施設はKADOKAWA直営の書店「ダ・ヴィンチストア」に立ち寄るだけとあり、「朝からここ1カ所でよかった」と冗談めかした声も。「日本最大級のポップカルチャー発信拠点」をうたうところざわサクラタウンが新名所になるか、気にかけていたい。

西東京・如意輪寺 ロウバイ もうすぐ見ごろ

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ほぼ満開となり上品な香りを漂わせるロウバイ=1月26日午後

 西東京市泉町の如意輪寺でロウバイの黄色い花が咲き始め、一部で見ごろを迎えている。

 

 市内でロウバイを植えている所は少なく、如意輪寺境内は隠れた名所。仁王門をくぐると、参道右側に多い。

 

 観音堂前のロウバイは1月25,26日の暖かさで開花が急に進み、八分咲きに。甘い香りも漂う。この冬は寒さの訪れが遅かったせいか、例年なら12月中に開花するはずなのが年明けになったという。

 

 半透明でつやのある、ろう細工を思わせる黄色い花よりも、まだつぼみの方が多い木が目立ち、これからが見ごろ。同寺は「自由に花を楽しんでください。ただ、枝を折るのはやめて」と話している。

<西東京市議会> ワクチン接種準備と事業者支援 コロナ対策費追加を可決

 今年第1回の臨時会が1月18日に開かれ、新型コロナウイルス対策としてワクチン接種の体制づくりと売り上げ減の事業者支援を合わせ約3億2300億円を追加し、総額約1053億7200万円とする市一般会計補正予算案を賛成多数で原案通り可決した。

 

 ワクチン接種では、3月中に65歳以上の人に「接種券」を印刷、郵送するほか、対象者などからの問い合わせや相談に電話で応じるコールセンターを外部委託して設置し、接種を迅速に始められる体制を整える。健康情報システム改修などと合わせた事業費は約6400万円。

 

 接種は医療機関または市が設営する会場で受けられるが、設営会場について市は「医師会と調整している」とした。

 

 市内事業者への緊急支援事業は、今回の緊急事態宣言などの影響により、1月の売り上げが前年同月比20%以上減り、家賃や人件費などの固定費の支払いが負担になっている中小企業、個人事業主に一律10万円を支給する。昨年2月以降に開業した場合は、開業後に最大売り上げだった月より20%以上減少していることが要件だ。

 

 一律支給することについて市は「即効性を考えると定額が妥当」とする商工会の判断を受け入れたという。支給対象は全事業者のほぼ半数で、前回家賃補助した実績の2倍となる2500事業者を見込む。事務経費を加えた事業費は約2億5900万円。

 

 2月8日から相談を受け付け、申請は2月27日から5月24日まで。手続きは簡素化し、パソコンが苦手な人には田無と保谷の商工会事務所で入力支援を行う。支給は申請後2週間程度の見込みという。

初春 笑いもつつましく 小朝独演会

 春風亭小朝独演会が1月16日、三鷹市公会堂であった。新型コロナ対策で客席は横も前も1席空け、半分の入場者で満席。

 

 女性若手二つ目の春風亭ぴっかり☆さんが、旦那の浮気をめぐる「悋気(りんき)の独楽(こま)」を演じ、小朝さんは「代書屋」の短縮バージョンから「親子酒」につなぐ二本立て。

 

 中入り後は、のだゆきさんが鍵盤ハーモニカやリコーダーを使った音楽パフォーマンスを披露。小朝さんは、正直なくず屋と意地っ張りの侍同士が笑いを織りなす「井戸の茶碗(わん)」を演じた。

 

 新春初笑い寄席にふさわしく、ぴっかり☆さん、のだゆきさんともに明るく華やかな雰囲気を衣装と芸でしっかり作り上げた。小朝さんは円熟した落語だけでなく、高座を取り巻く物理的な環境が厳しいことや収入の減少などのコロナ禍を笑いにまぶして語った。

 

 隣と前が空席だと、他者の体の動きや笑い声がこうも感じられないものなのか。新型ウイルスは客同士の一体感をも奪っている。

埼玉・所沢 晩秋の小手指ケ原古戦場~狭山湖を歩く

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狭山湖の歴史を学び、景色を楽しむ参加者たち


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人工増殖されている絶滅危惧種のミヤコタナゴ=所沢市埋蔵文化財調査センター

 市民有志でつくる北多摩自然環境連絡会の第3回ウオッチングが11月25日にあり、10人が埼玉県所沢市西部の古戦場や狭山湖(山口貯水池)をめぐり、晩秋の一日を楽しんだ。

 

 西武池袋線小手指駅南口を起点に、大まかには南へ向かい、西武山口線西武球場前駅を終点とする約7キロのコース。所沢市が発行するパンフレット「ウォーキングナビ」西エリアのおすすめルートの一つだ。

 

 小手指駅から線路沿いの道を進むと左側に桑畑が広がる。今なお続く養蚕の営みを想像して旅情のスイッチが入る。このあたりからバイパス国道463号に出るまでだだっ広い畑地帯を行く。小手指という地名の由来は、日本武尊(やまとたけるのみこと)が小手をかざしたなど諸説あるが、一面の原っぱだったことで小手指ケ原の名が付いたことは容易に想像できる。

 

 国道を横断して旧鎌倉街道を南下し、市立埋蔵文化財調査センターに立ち寄った。旧石器時代からの出土品よりも国の天然記念物で絶滅危惧種の淡水魚ミヤコタナゴの展示水槽に足を向ける人が多い。

 

 ミヤコタナゴはコイの仲間だが、大きいものでも体長6~7センチほどで、ひれがほんのりと赤い方がオス。ここで人工増殖し、市内の小学校や市民ホールなどで飼育展示しているという。

 

 センターの近くに、新田義貞が鎌倉攻めで幕府軍と戦った地であることを示す小手指ケ原古戦場の碑と、新田軍が源氏の白い旗を掲げて陣を張ったとされる白旗塚があった。古墳にも見える小高い白旗塚に登ったが、頂上に史跡らしいものは何もない。かつてここにあった白旗塚碑と小さな石造の祠の浅間神社は、この後訪れる北野天神社の境内に移されていた。

 

 北野天神社、藤森稲荷神社を経て、大規模太陽光発電施設「メガソーラ所沢」の見学台で昼食の弁当を食べることになった。施設は、一般廃棄物の最終処分場を埋め立てた上に太陽光パネルを4千枚余り敷き詰め、市が運営、売電している。260世帯分の電気を賄える発電量と説明されていた。施設と向かい合う林地はトトロの森になっている。

 

 腹ごしらえを終え、15分ほどで狭山湖をのぞむあずまやに着いた。雨上がりの湿った空気がまだ残っていて、富士山は見えず、対岸の紅葉はにじんでいた。ただ岸に近い湖面で、カワウと思われる黒い水鳥の群れだけが動いていた。

 

 堤体の上の通路に人影は少なく、気兼ねなく歩ける。所々に設置された説明板でこの人造湖の歴史を学んだり、西洋風の取水塔を眺めたりして退屈しない。同じ東京の水がめでも、南側の多摩湖(村山貯水池)に比べると、狭山湖は来る機会が少ないと話す人がいた。

 

 狭山湖からは、プロ野球埼玉西武ライオンズが必勝祈願する狭山不動尊(狭山山不動寺)、行基菩薩が開いたと伝わる山口観音(金乗院)と二つの寺の境内を歩いた。山口観音では本堂前の左右の石灯籠の上にネコが鎮座していて、何人かの被写体になっていた。

 

 山口観音の参道を出ると、ゴールの西武球場前駅は目の前。ただし、現在の球場名は「メットライフドーム」。狭山湖では屋根の上部が小さく見え、「あんなに遠くまで歩くの」と気弱な声を発した人も元気を回復した様子だった。