下保谷の屋敷林「作左衛門の森」残そう 市民団体が講演会

屋敷林を形作る、表門付近のケヤキの大木。奥が主屋

講演会の会場となった土蔵の入り口

 西東京市保谷3丁目に残る屋敷林と緑地を後世に残そうと、民間有志でつくる「作左衛門の森を愛する会」(伴武彦会長)が3月26日、初の一般向けイベントとして講演会を敷地内の土蔵で開いた。

 

 作左衛門の森は高橋孝さん(75)夫婦が暮らす住宅を中心とする敷地一帯約2800平方メートル。当主は江戸期享保まで交代名主役を務めていた旧家で、屋号が「作左衛門」。

 

 徒歩3分ほど南にある別の旧高橋家屋敷林(市が買い上げ、現在は特別緑地保全地区)は「おかしらさんの森」と呼ばれ、屋号で区別された。

 

 高橋孝家の主屋、土蔵、衣装蔵、納屋、表門の5棟は貴重な国民的財産として国の登録有形文化財になっている。改修や増築はあったが、いずれも築90年以上の歴史的建造物だ。

 

 表門から建物を取り囲むスダジイケヤキなどの大木を主とする屋敷林は、建物と樹林の一体的な美しさを見せる。

 

 イベントは当初、作左衛門の屋敷林と下保谷の緑地をめぐるツアーとして企画されたが、降雨のため土蔵内での講演会に変更され、午前・午後の部とも約20人が参加した。

 

 講演会は東京農工大学名誉教授の福嶋司さんが「屋敷林を考える」と題し、武蔵野の屋敷林は冬の季節風対策と改築時の材料など生活資源であったことや樹木の配置、外国には似た形態がないことなどを画像を見せながら話した。

 

 しかし、所有者の高齢化や税率が高く猶予期間が短い遺産相続制度などから屋敷林の消失が進んでいると指摘。また屋敷林は景観維持だけでなく、地域の文化を伝える生き証人でもあるとして住民と行政が一緒になり、行政同士も連携して国に対策を求めていくことの必要性を強調した。