
瀧川鯉昇独演会が3月20日、三鷹市であり、病院通いを除けば1カ月半ぶりに西東京市の外へ出た。
雨模様の祝日なのに西武バス停留所の電光表示は、お彼岸で道路が混みバスに遅延が生じていると伝えていた。三鷹駅行きのバスも数分遅れてきて、途中の停留所もいつになく多く停車し、終点までほぼ満員状態だった。
三鷹駅で乗り継いだ小田急バスも満員で発車。会場前で降りたときは開演時刻の数分前。会場内では不自由な脚を引きずり、着席している何人にも頭を下げ、鳴り始めた出囃子(でばやし)にもせかされて自分の指定席にたどり着く。
「どうして、どうして」と質問攻めがおかしい前座の『浮世根問(うきよねどい)』、おねだり上手で機転の利く金坊が愉快な二つ目の『初天神』と続き、前半のトリで鯉昇は『肥瓶(こえがめ)』と『武助馬(ぶすけうま)』の2席を演じた。
肥瓶は、し尿をためるかめ。水がめに思わせて祝いの品として贈ったが、その水を使った料理を出されてギャフンとなる次第。
鯉昇は、その昔、団体客が高座そっちのけで弁当を広げたのを見てこの汚い噺(はなし)が演じられ、注意喚起したと説明した。
武助馬も、馬役の前脚を担う親分が大きなおならをする。シモの話2題でまとめたということか。
中入り後は、三代目江戸家猫八の娘という江戸家まねき猫のものまねがあり、大トリは、民間の秘密宴会に気づいた役人が暗にごちそうの追加提供を求める、現代では笑ってはいけないかもしれない『二番煎(せん)じ』。役人がシシ鍋の鍋の底までつつきあさる動作に見ほれた。
鯉昇の高座で気になったことが一つ。それは前後半で1度も羽織を脱がなかったことだ。
噺が本編に入ると、真打ちが間もなく羽織を脱ぐのは、新たな場面展開を伝えるなどいくつかの意味があるとされ、落語会ではおなじみの光景。そんな業界の常識にあらがうメッセージなのだろうか。
あるいはマクラで「冬眠」とか「仮死状態」とか言っていたのは自分の調不良のことだったのか。
「いやー、うっかり、うっかり」と笑い飛ばす、あの「無敵のおとぼけ」だとよいのだが。