東京文化財ウィークにちなみ、保谷地域を潤した特産品の一つ「たくあん」に光を当てたミニ講演会が11月3日、西東京市下保谷4丁目の屋敷林であった=写真。
下保谷の自然と文化を記録する会と市教委が藍に続くものとして取り上げ、山義食品工業(練馬区西大泉)社長の本橋義和さんが「たきあんができるまで」と題して話した。
本橋さんによると、初代は大正元年から保谷で養蚕業の傍らたくあんを作っていたが、製造販売に本腰を入れたのは曾祖父で、主に練馬大根を使っていた。
しかし、経済の高度成長に伴い、畑は宅地に変わり、原料供給を求めた埼玉県、群馬県でも練馬大根に近い品種の「白首」の作付け産農家が急減。現在は青森県から九州まで国内各地から原料を集めているという。
「東京たくあん」と呼ばれるものについて、本橋さんは、生大根に粗塩を振り、重しを載せて水分を抜いた後、塩と米ぬかを振って漬けなおし、1~2カ月間、熟成発酵させる工程を施したものと説明。
同社はこの工程を群馬県内の工場ですべて手作業で行っており、たるでの出荷とともに関東では珍しい存在という。熟成した大根は塩抜きしてから味付けをし、真空包装して出荷される。
塩と米ぬかだけで漬けたたくあんは発酵の状態を見極めなければならないため、「こういう機会にしか出せない」と、講演会に集まった約30人に試食してもらい、パリパリした食感や自然の味を確かめてもらっていた。