その向こうにらせん状のスロープが見える。この博物館の「見せ方」の特徴となっているのが「スロープ展示」で、標高によって変わる日光地方の自然や動植物の姿が、壁のパネル写真や剥製、標本などを見ることでわかるという仕掛け。
見学時間が足りなくなり、「展示室1」を駆け足で回った。いきなり恐竜の模型やナウマンゾウの骨格模型が待ち構えていたが、県内で化石は見つかっておらず、「地質時代を語るのに欠かせない生き物として」(解説員)置いたという。
昼食後、バスに戻るために歩いた県の中央公園は、池と木々の新緑がつくる広い庭園やまっすぐなユリノキの並木道が美しく、心が和むのだった。
バスは30分もかからないで大谷資料館に着いた。バスを降りると、垂直な石の壁がすぐ目に入り、地底探検への好奇心をそそる。
「うつのみやシティガイド」の女性に案内された地下30メートルの世界は、石を切り出した跡である、いろいろな高さと広さの空間がつながっていた。全体で東京ドーム1つ分というが、想像がつかない。
この日の気温は7度。結婚式にも使われ、「寒くて披露宴がない分、安上がり」とか。大谷石はマイナスイオンを出し、においを吸い取るので、坑内が臭くなることはない。コウモリのふんが見つかったことがないので、坑内に生息していない―など話題は多い。
冬の乾燥した時期に石が塩分を噴き出し、白っぽい結晶の「石の華」になって付着していた。指で少しつまみ、なめてみた。やわらかい塩味だった。