共感と異世界と 映画「おじいちゃんの里帰り」

 名作の中で世界の旅も楽しめるという映画上映シリーズの第3弾『おじいちゃんの里帰り』を11月19日、三鷹市芸術文化センターで鑑賞した。

 

 舞台はドイツとトルコ。家族を連れてトルコの田舎町からドイツに移住し、45年間を過ごした「おじいちゃん」が、4人きょうだいの子どもと孫の大家族を引き連れ、車で故郷に向かう。

 

 おじいちゃんが若い時、ほれた彼女をどう射止めたか、異国ドイツで妻が初めて見た洋式トイレをめぐるドタバタ、大学生の孫娘の妊娠など、当事者には深刻な問題も、他人事として見ている者にとっては、身に覚えがあったりどこかで見聞きしたりしたことのある家族の小事件。回想シーンも今の生活にもほんわかした笑いを誘われる。

 

 現代の移民問題のような重苦しさはない。とにかく労働力不足で、おじいちゃんが若い頃は「ゲスト労働者」と呼ばれ歓迎された時代の話。それでも、異国では宗教や言語、慣習が違い、そもそも3世代が一緒に住むことは簡単ではないはずだ。それは所々にちりばめられているのだが、後を引かない展開になっていて疲れない。

 

 妻には時々頭が上がらないおじいちゃんに「うんうん」とうなずき、いざとなれば有無を言わせぬ求心力に脱帽する。訪れるトルコの田舎の岩と木々の風景は異世界

 

 観客はおじいちゃん少数、おばあちゃんが圧倒的に多かった。おじいちゃんにこそお薦めの映画だと思う。2011年の作品。101分。