「男女は平等」わかりやすい諭吉の女性論 西澤教授講演

イメージ 1 NPO法人東京雑学大学の第871回の講義は1月24日、田無公民館で行われた。慶應義塾福澤研究センター教授の西澤直子さんが「福沢諭吉の女性論・家族論」と題して話し、約50人が受講した。
 西澤さんは、女性は劣っているとする儒教文化圏の日本、韓国は世界の中で女性の社会的地位が低いこと、自由主義経済の進行と専業主婦願望は比例しており、勝者や強者へのあこがれとして専業主婦になりたがる傾向が中国にも見られるなど、女性の地位をめぐる現状について前置きして本題へ。
 「諭吉の女性論は男女平等論であり、誰もがわかりやすい」と西澤さんは強調。1870(明治3)年の書にある「男といい女といい、等しく天地間の一人にて軽重の別あるべき理なし」や1885年の著作イメージ 2にある「男子の為(な)す成す業(わざ)にて女子に叶(かな)わざるものなし」などの文を紹介した。諭吉は女性が責任を持つことと経済的自立の大切さにも言及している。
 家族については「1人の男性と1人の女性」が、「愛」、互いに尊敬する「敬」、相手の立場になることで許す「恕(じょ)」の3つの感情で結びつく関係だとした。家族の助けがあれば、近代国家形成の第一歩となる「一身独立」(自分で判断し決定するという精神的自立と経済的自立)もできるとの考え方だという。ただ、家族でまとめた財産の使い道を一つに絞れるかなど「家族論にはあいまいな部分が残る」と西澤さん。
 諭吉の晩年も結婚する人が減ったようだ。明治31年の著作に「食事の時間を合わせ、寝起きの時間が自由にならず、出産すれば子育てなど、2人で生活することは面倒なことや苦労が多いけれど、喜びは倍以上になる。活動する範囲は広がり、家族は自分の支えになり、差し引きすると結婚は人生にプラス」という趣旨のことを書いているという。現代にも説得力を持つか、興味深い。
 諭吉が男女平等を説いた時代、女性は富国強兵を担う夫に服従する妻や強い兵士を生み出す母の役割が当然のこととされ、法律で平等をうたっても教育現場では「お国のため」に奉仕するのが最大の使命とされるなど、平等はゆがめられた。西澤さんは現代にもマスメディアの広告や漫画、アニメなどに男女平等の意識が欠如したものがあると批判。専業主婦問題も労働を両性の問題として考えることが重要で、「変革にたゆまぬ努力を」と結んだ。