大人の休日俱楽部趣味の会主催で1月13日、「三陸漁師を支える海の力」と題する講座が東京・千代田区であり、約50人が参加した。
講師は東北大学災害科学国際研究所の川島秀一さん。三陸沿岸の漁師町には(1)エビス(2)船霊(ふなだま)(3)龍神-の言葉で表せる海への信仰があり、「漁労文化として東日本大震災後も受け継がれている」と話した。
「エビス」は七福神の一柱ではなく、自身で寄り上がったり、魚を追い込んだり、魚を引き連れてきたりする生物をこう呼び、特にクジラが多くまつられるという。
船に宿る船霊は津波の襲来を鳴いて知らせる。甘いものが好きで、どうも女性神のようだ。帆柱の根元や舳先(へさき)の下部に紙や木を切った人形(ひとがた)をご神体として納める。
竜神は海の底から上がってくる。津波の後に龍神(龍王)をまつる石碑を立て、石碑に紙絵馬を貼り付ける習俗がある。「失せ物絵馬」と呼ばれる絵馬は、海に落とした包丁、モリなどの金物の絵を描き、時には射止められなかった獲物も描いて神社に奉納する。
川島さんは、三陸沿岸の漁師は明治以降だけでも何度も津波に見舞われているのに、東日本大震災の後でさえも「海からずっと恩恵をもらってきた。離れられない」「海は太平洋銀行だ」と答えてくると言い、「ピンチをチャンスに変える、たくましい精神性」と称賛した。
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大地震と大津波に襲われた三陸地方を今年こそバイクで巡り、震災遺産と復興の様子を見たいという計画を前提に、この講座に参加した。
気仙沼に生まれ育ち、漁労文化を長い間研究してきた川島さんは三浦半島や長崎にも調査の足を延ばしており、講座は説得力があってしかもわかりやすい。
ツーリングで訪れる予定の津波襲来の碑も、碑文や説明板を読んでどれほど深く理解し想像できるだろうか。漁師と会えるかわからないし、会話が漁労文化にまで及ぶとは考えにくい。