「バイクの師」が住む道南・厚沢部 6月20日(火)

f:id:amullar:20200504163826j:plain

日本最後の和式城郭・館城(たてじょう)跡

 道南の厚沢部町(あっさぶちょう)へ向かう日になった。ジャガイモのメークイン発祥の地とはいえ、有名な観光名所はなく、全道的なニュースもない、人口約4千人の過疎の町。

 

 ここにオートバイの面白さやツーリングの楽しさを教えてくれた、私より少し若い友人が夫婦で住んでいて、何日かの滞在を甘えていた。

 

 札幌のホテルを午前8時にチェックアウト。すぐ国道36号に出られるはずなのに30分余りも迷走した。定年退職するまで5年間も札幌中心部に住み、車もバイクも乗っていたのに…記憶も勘も衰えたものだ。

 

 札幌南インターチェンジ(IC)から道央道に乗った。樽前サービスエリア(SA)と噴火湾パーキングエリア(PA)で休憩を取り、八雲ICで下りた。16キロ先の落部(おとしべ)ICの方がつながりはよいが、給油と昼食には八雲の方が便利だと考えた。

 

 八雲町の国道5号沿いは昔と変わらない風景。そば店「正直家」でかき揚げそば(840円)を食べていると、なにかと話しかけてくる地元の高齢男性が「向かいのスタンドがこの辺では一番安いよ」と教えてくれた。そこでガソリンを満タンにして、国道を落部へ走り、道道67号に入った。

 

 名前が印象的な「銀婚湯温泉」を過ぎる。待ち合わせの「八雲町山ぶき駐車場公園」が右手にあった。やがて、赤いBMWのバイクがやってきた。バイクは20年以上使っているのはずなのに、ユーザー車検を通す腕前を反映して空冷エンジンの音は軽快だし、塗装はピカピカ。

 

 彼は札幌の会社を早期退職し、厚沢部町館町(たてまち)に居を構えた。「森と清流」が売りの町にふさわしく、ヤマベなど渓流釣りのポイントに恵まれ、それでいて釣り人が集中しないことが定住の大きな動機になったと言う。

 

 館町は町南部の集落。まだ午後4時前で日も高い。彼は自分の軽トラックを運転して館町を一回りしてくれた。松前藩が築城した日本最後の和式城郭「館城」跡(国指定史跡)があるとは知らなかった。旧幕府軍の攻撃を受けて3カ月で焼け落ち、土塁や堀、礎石などが残っている。

 

 桜の季節には「館城跡まつり」があり、官軍と旧幕府軍の行列などが行われ、彼も祭りの運営に関わっていると言う。

 

 彼の家のすぐそばの道道を1キロほど行くと町営の温泉施設・館地区憩いの家があり、この日の疲れを洗い流した。入浴料金は大人380円と安い。

 

 夕食の後、彼にうながされて外に出、夜空を見上げた。無数の星が空いっぱいにきらめいて美しく、地上ではカエルが大声で合唱していた。

 

 この日の走行距離は304キロ。