厚沢部町の友人宅を拠点とする道南巡りの初日。SUV(スポーツ用多目的車)のビッグホーンに乗せてもらい、函館へ向かった。
「お土産にも最適」と友人夫婦のイチ押しは金木水産食品のつくだ煮昆布。シイタケ入り、ゴマ入りなど数種類あり、500グラム袋が500円からと割安で味もよいという。函館漁港のそばにある工場直売で、函館に出かけると必ず家庭用にまとめ買いをするそうだ。
函館漁港はふつう入船(いりふね)漁港と呼ばれ、観光地というのイメージが乏しく、相当な拡大地図でないと名前が見当たらない。私は2年間、函館に住んだが来た記憶がない。
奥さんが事務所に入って買い物をしている間、漁港を見渡すと、誘魚灯をたくさんぶらさげたイカ釣り船が何隻も岸壁に係留され、後ろに函館山がそびえていた。
この漁港は1896(明治29)年に改良工事が始まり、石積みの防波堤が残る。近くに「紀念碑」と、防砂堤や船揚げ場などの施設と一緒に土木遺産に認定されたことを説明する掲示板がある。
漁港の近くに路面電車・函館市電本線の起終点の停留所「函館どつく前」があり、湯の川行きが発車したところだった。女性観光客が無人の停留所にカメラを向けた。
市電通りを走り、昼食の手打ちそば店「かね久 山田」(宝来町)に向かう。二十数年前の函館勤務時代にも行ったことのある大正中期創業の老舗。かけともりを両方食べる、午後2時ごろにはめんがなくなり閉店する、という人気店だった。それは今も変わらないらしく、正午前に入店した。
テーブル席は先客で埋まり、小上がりへ。好みのそばを頼んだ後、テーブル席の方で「角煮でーす」と店の人の声が聞こえた。裏メニューがあるのだという。私たちも角煮を注文した。
次に向かったのは北海道新幹線の新函館北斗駅。駅舎の前は道路と緑地帯と駐車場だけの殺風景な景色だった。東海道新幹線に新横浜駅ができたばかりのころの風景を思い出させた。
駅舎の中も特に見る所はなく、函館地方の有力スーパー「魚長」(うおちょう)大野店で夕食用の刺し身セットなどを買い込む。私も痛風によるタブーを排除して日本酒「一ノ蔵」を購入。
空模様は怪しかったが、午後2時すぎと時間も早いからと、「きひじき高原」(北斗市)に寄ってくれるという。国道227号をそれて山道を上っていくと「メロディーロード」があり、地元がモチーフとなって作詞された童謡「赤とんぼ」など2曲を車のタイヤが奏でてくれる。
きひじき高原は標高560メートルで、パノラマ展望台からは函館山や津軽海峡が見えたが、北から低い雲が流れてきたため、天気のよい日にまた来ることにし、早々に国道に下りた。
いったん帰宅し、館町の北にある鶉町の「うずら温泉」(大人400円)の大浴場で体をほぐした。うずら温泉は宿泊もでき、とがった塔が立つ洋風の外観が印象的だった。