法隆寺の世界遺産登録30周年を記念するシンポジウム「世界の至宝・法隆寺~1400年の歴史を未来へ~」(法隆寺、朝日新聞社など主催)が2月18日、東京・有楽町朝日ホールで開かれた。
定員の2倍強の応募があり、抽選に当たった約700人が参加した。
古谷正覚・法隆寺管長が、世界最古の木造建築の金堂など建物の沿革を紹介し、「焼損した金堂壁画をどう残し、公開できるかを考えたい」とあいさつ。
文化財の保存科学や防災などの専門家3氏が世界遺産の法隆寺をめぐり、「内容と価値」「文化財防災の未来」「登録の意義と展望」のテーマで講演した。
古谷管長と専門家の4氏による座談会では「壁画だけでなく、焼けなかった柱の内側を見たり、においを感じられたりと五感に訴える見せ方や動線の組み立てが大事」「傷ついたものにも価値がある。負の遺産を被災の記憶として伝えていくのもこれからの使命」などの意見が出た。
中村史郎・朝日新聞社長は閉会あいさつの中で、法隆寺金堂壁画保存活用委員会が3月中に提言をまとめる予定だと述べた。
焼けた金堂の壁画や内陣の柱などの部材は現在収蔵庫に収められ、保存活用のための調査や研究に資金を寄付した人に限り公開されている。調査研究の成果が一般公開の実現にどれだけ近づけたのか、提言の内容が注目される。