柳亭市馬を聴く 三鷹で独演会

 柳亭市馬の落語を初めて聴きに行った。4月3日午後、三鷹市芸術文化センターで開かれた独演会。新型コロナ対策で前後左右の座席を空けて「満席」だった。

 

 「落語は初めてという方にもお勧めしたい、柔らかな語り口」という財団のチラシに誘われ、2月も終わろうとする日のチケット発売から10分後にインターネットでゲットできた。

 

 番組は前座の柳亭市松、二ツ目の柳亭市弥と一門の弟子に続いて市馬師匠が「花見の仇討(あだうち)」を演じた。仲入り後の演目は「茶の湯」。

 

 市馬の第一印象は、その美声だ。ツヤがあって通りがよい。温和な表情が一転、まずい茶を飲むときの顔芸には身を乗り出して見入った。それでいて、語りにもしぐさにも品がある。正統派の落語家と言われるゆえんか。

 

 弟子をネタに笑いを取ろうとしないところに、落語協会会長に推される人望も感じられた。3月には芸術選奨の大衆芸能部門で文部科学大臣賞を受けた。

 

 出し物はいずれも古典落語の名作とされ、長屋の住人が巻き起こす、あるいは巻き込まれることも共通している。名人級の落語家はその日の客席を見て演目を決めるというが、はたしてどうだったのか。

 

 この日の悔いは、花見の仇討のオチに出てくる「六部」の意味がわからず、客席の笑いに参加できなかったことだ。