出ばやしは「ポニョ」 三鷹で一之輔独演会

春風亭一之輔独演会の中入りの会場

 春風亭一之輔独演会が5月8日、三鷹市公会堂であった。演目は前半が「浮世床(うきよどこ)」と「妾馬(めかうま)」、後半が「たちきり」。

 

 「たちきり」は題も知らず初めて聴いた。金遣いが荒く遊び人の若だんなが蔵に100日閉じ込められているうちに、恋仲の芸者が若だんなの不実を嘆いて死ぬ。置屋を訪ねてそれを知った若だんなが供養の酒を飲んでいると、仏壇から三味線の音が流れ、ふと絶える。「ちょうど線香が断ち切れました」。

 

 この人情噺(ばなし)に入る前のマクラは珍しく短かった。それと対照的だったのが前半の高座だ。

 

 出囃子(でばやし)は意表を突くアニメーション映画崖の上のポニョ」の主題歌。「三鷹と言えばジブリ」と三鷹の森ジブリ美術館スタジオジブリ制作の「ポニョ」に引っ掛け、登場から地元ファンとの距離をぐいと縮める。

 

 ジブリ作品で前々週にテレビ放映された「魔女の宅急便」に深く入り込んだ。初めて全編を視聴したと言い、魔女の家系で修行の旅に出る主人公の少女を引き合いに、「代々の家系に生まれ出来の悪い」落語家をいじったり、学校寄席で子どもたちの無反応ぶりに「おれはニシンのパイか」と自虐的に怒ったり。

 

 このほか最近の事件事故やゴールデンウイークに絡めた自他の落語家のエピソードを語り、マクラだけで一席分を超えるほどの時間を笑わせてもらった。

 

 一之輔師匠ぐらいになると、一つの噺を持ち時間に合わせてその場で伸縮自在に語れるそうだが、マクラと本編のバランスの妙もまたお見事というしかない。